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第118話

 こうしてちゃんと、須藤の気持ちを聞けて良かったと佑月は思った。須藤は佑月をちゃんと一人の人間として、しっかり見てくれている。ただ須藤の中での友人との境界線が、人と違うというだけだったのだ。  本当は佑月のことを友人と言いつつ、本音は自分が面倒を見てやってるという、少しの驕りがあったのではと思っていた。そうだとしたら悲しかったのだ。腹も立っていただろう。その事が少し佑月の中での燻りでもあった。  単に須藤は我が強くて、周囲と合わすことはしない。だから須藤は認めた人間には、とことん踏み込んでしまう。それは距離感が上手く取れないせいなのかもしれない。不器用な男だ。  だからと言って、今回村上を傷付けたことは許される事ではない。 「皿、片付けてきますね」 「話はもういいのか?」  食器をまとめて手に持つと、須藤は少し驚いたように問いかけてきた。佑月はここで少しの微笑を浮かべた。 「はい、もういいです」 「……佑月」  佑月の顔を須藤は食い入るように見つめているのが分かったが、佑月は目は合わせることはしなかった。どう返せばいいのか、分からなかったからだ。 「須藤さんはまだ〝病人〟なんですから、大人しく部屋で寝ているか、ソファで寝てください」 「もう眠気もないし、気分もいいから──」 「まさか仕事へ行こうとか言うんじゃないでしょうね」  佑月は思わずキッと鋭い目で須藤を睨んでしまう。そんな佑月の目を見ながらも、須藤は何処か嬉しそうに、ほんの僅かだが目尻を下げる。 「今日は行かない。お前にキツく言われているからな。ただ、かなり身体が楽になったのに、寝ていろと言うのは拷問だと思ってな」 「確かに……。あ! じゃあこうしませんか? っと、まずお皿片付けてきます」 「あぁ、すまない」  佑月はサッと今朝の食器を片付けてから、新たに食洗機へお皿を並べた。濡れた手をタオルで拭いて、佑月は自室へ向かった。パソコンとケーブルを手に持ちリビングへ戻る。 「何をするんだ?」  須藤は興味を引かれたように佑月に訊ねてきた。 「映画を観ましょう。これなら須藤さん絶対寝そうですし」  佑月は一人クスクスと笑いながら、パソコンとテレビにケーブルを繋いだ。 「映画など全く観ないからな。でもそう言われると意地でも寝たくないな」  寝たくないと言われたら絶対眠らせたくなると、佑月は内心で闘志を燃やす。恋愛系の映画なら、須藤は全く興味がなさそうだ。絶対眠くなるはずと、佑月は勝利を確信した。  パソコンから動画配信サービス、プラームビデオに繋いで佑月は真剣に映画を選ぶ。実は密かに佑月は観たい映画があるのだ。 (あった! しかもレンタルじゃない) 「これを観ましょう」  4Kの85V型の巨大なテレビで映画は、さぞ迫力があるだろう。 「ゴースト……ホラーか?」  須藤が怪訝そうに問いかけてくる。佑月は思わず噴き出しかけた。しかしタイトルを見ればそう思ってしまっても仕方ない。

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