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第125話

 見ず知らずの人間ならば、仕事として受けられる。しかし友人となれば話は別だ。須藤に直接聞いたとしても、それを他人に吹聴するような真似。裏切り行為と変わらない。  〝今の佑月〟と須藤との関係が確固たるものではないとしても、空白の一年は確かに須藤との絆はあったはずだからだ。それに佑月には、先程から何か自分では説明がつかないものが、胸中に渦巻いていた。 「どういうことかしら?」  女は怪訝そうに佑月らを見る。佑月は女に向き合うと腰を上げて、頭を下げた。 「申し訳ございません。誠に勝手ながら今回のご依頼は受ける事が出来ません。私は……須藤さんと友人でもあります。彼を裏切る事は出来ません」 「……友人?」  女は一泊置いてから、突然声を上げて笑った。 「仁が友人? 有り得ないわ。人付き合いが嫌いな彼が、友人なんて作るわけないわ。女でも考えられないのに、それが男だなんて……尚更無いわ」  女は鼻で笑い、佑月へ馬鹿にしたような目付きで視線を送ってくる。佑月自身だって須藤が自分を〝友人〟と言うことに、未だに違和感がある。だけど須藤本人、陸斗らメンバー、颯もそう言うのだから友人だと思うしかない。佑月には記憶がないのだから。 「そう仰られても、私は現に彼のマンションで一緒に住んでいますが」  そう佑月が告げると、女はここ一番に驚愕の表情を見せた。暫く放心状態のような女に、佑月は少し心配になり、陸斗らと顔を見合わせた。 「あの……」 「……そう」  女は小さく呟くと、徐ろに腰を上げて、フラリと背中を向けていく。 「お客様?」 「今日の依頼は、もう結構よ……」  力なくそう告げた女は事務所から出ていった。  一体女に何があったのか。そんなに友人が、須藤のマンションに住んでいることがショックなのか。それほどに、あの女の表情は落胆の色が濃かった。それはショックを受けたということだろう。佑月は思わず首を捻っていた。 「な、なんだか凄いゴージャスな女性でしたね。私なんか圧倒されて声も出ませんでした」  花が溜息を混じえつつそう言い、佑月の隣へと力なく座った。 「確かに……。あれ程の美人はなかなか目にすることがないから、俺も緊張したよ」  緊張もしたが、なんだか女の話を聞いている時から、ずっとモヤモヤが胸を巣食っている。また胸焼けかと佑月は胸をさすった。 「佑月先輩? なんか眉間に凄くシワが寄ってますよ」 「え? あ、ご、こめん!」  海斗に指摘され、佑月は眉間を揉んでシワを伸ばす。表情にまで出してしまっていたかと、佑月は反省する。 「それはそうと、佑月先輩が須藤さんと一緒に住んでることを言ったのが、凄く珍しいですよね」  陸斗が佑月の対面のソファに座りながら言う。海斗は陸斗の隣に座って同意するように頷いた。

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