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第126話

「そう……かも。なんでだろ?」  佑月は誤魔化すように笑う。しかし内心では、自分の分からない感情が先程から渦巻いており、戸惑っていた。  どこか自分は、さっきの女に僅かながらも対抗意識をもっていなかったか? そして須藤の恋人を僅かながらも、知りたいと思わなかったか? 佑月は自分の感情のままに依頼を受けようとしていた。  なぜこんな風に思うのか。須藤に対しての新たな悩みに、佑月は頭を抱えるしかなかった。 「何にしろ、陸斗。さっきは止めてくれて本当にありがとう。プライバシーの侵害もいいところだったし。なんか私情が混ざってしまって……」 「いえ、それはその……いいんですけど。その私情って?」  陸斗は何故か、少し目を輝かせているような、嬉しそうとも取れる表情を見せている。それは海斗と花も同様であった。佑月は怪訝に思いながらも口を開く。 「須藤さんのプライベートって、一緒に住んでても謎だらけで。恋人がいることは知ってるけど性別すら知らなかったし……。だから、ものすごく言いにくいんだけど、その……興味本位でした」  佑月は三人に頭を下げた。何でも屋の所長が、興味本位で仕事をするのかと、怒られても仕方ない。 「佑月先輩、頭を下げることなんてないですよ!」  海斗が言うと、陸斗と花は仲良く頷く。 「だって、興味本位ってことは、少しは須藤さんのことを知りたいって思ってるってことですよね?」  花の目がより一層キラキラと輝き出す。須藤のことを知りたいと思っただけで、こんなにも三人が喜んでくれる。それはやはり、上手くやっているのかなど、心配していたからだろう。須藤とは最近まで少しぎこちなかった事は、決して口にはしないようにしなければならない。 「うん。記憶になくても、やっぱり友人だと言うなら、知らないままではまずいし。でも、だからと言って、恋人のことまで知りたいって思うなんて……最低だよな」  少し沈んだ佑月の声。三人は少し驚いたように顔を見合わせていたが、直ぐに笑顔を咲かせて何やら三人は頷きあっている。 「どうかした?」 「あー……いや、何でもなくて……何でもないわけでもなくて。その、友人の恋人が知りたいって言うのは、一般的にも普通のことですし。オレだって友達に恋人出来たって聞いたら色々聞きたくなりますし」  海斗の言うことに、佑月もなるほどと納得する。佑月は昔から友人関係は希薄なことが多かった。だから佑月の感覚から言えば、友人の恋人を知りたいと思ったことがなかった。でも一般的には、そういうものだと聞かされると、自分のこの〝知りたい〟と思う気持ちは普通なのだと知ると、少しホッとした。 「そっか……普通のことか。って、いやいや、でもそれを仕事に持ち込んだらダメだ。ごめん」  佑月がそう言うと、何故か花が少しガッカリしたような顔をしてから、海斗を睨んでいた。  今日は三人の輪に上手く入れなくて、佑月は少し寂しい思いをする。

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