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第127話

 三人は小さな頃からの幼なじみである。佑月が知らない事がたくさんあるのは当然だ。  ただ海斗の発言に、なぜ花が少し不機嫌になるのかが分からなかった。きっと訊ねてもはぐらかされそうだが。 「佑月先輩、最近須藤さんとはどうですか? 記憶がなくなって、須藤さんとは初対面のような状態なのに、当然のように須藤さんのマンションに行くことになって、本当に戸惑いとかいっぱいあったと思います。オレらもそれが当然だって送りだして……。それを今さら言うオレも、かなりズルいなって思いますが……」  陸斗の男らしい眉が少し下がる。佑月はそんな陸斗に笑みを浮かべて、首を緩く振った。陸斗らには陸斗らの考えがあってのことだから、それに不満を抱いたことなどない。  あの時は帰る家もなかったこともあり、ほぼ流されるように須藤の元でお世話になることになった。  救いだったのは、須藤がとても優しく、そして支えてくれていることだ。かなり過剰な面もあるし、佑月のプライベートにまで首を突っ込んでくるが、それ以外では、佑月が暮らしやすいようにと配慮もある。  護衛がついている。自由に行動出来ない。様々な制限があって息が詰まることもあるが、それも佑月を思ってのことだ。もう須藤らを困らせるような事はしたくない。 「何もずるくないよ。アパートがなくなっていたことはショックだったけど。そんな俺に住むところを与えてもらったんだし。須藤さんの事は、なんて言うのか……すごく過保護だよな」  佑月が笑って言うと、三人も同意するように笑う。 「今の俺は、突然須藤さんとの関係が始まったから、それが凄く戸惑うっていうか。前の俺はそれを当然のように受け入れてたと思うと、それも違和感があるんだよな……」 「記憶を失う前の佑月先輩も、もちろん少しずつ友人関係を築いてましたよ。色々ありましたし、須藤さんはグイグイくる人だしで、ぶっちゃけ大変でした。だから佑月先輩も、初めこそはめちゃくちゃ戸惑ってましたし。でもいつしか二人は、かけがえの無い強固な絆で結ばれるようになったんです」  海斗のその言葉に、佑月の心の重しがふと軽くなった。 「そっか……そうだよな……」  当然佑月の中でも分かっていたことだが、こうして第三者で佑月の近くにいてくれている海斗からの言葉は、とても真実味があった。  初めは佑月も直ぐには須藤を受け入れていなかった事が、ただそれだけの事が、今の佑月には何だか嬉しく感じたのだ。あの須藤となぜ友人となれたのかというモヤモヤが、少し晴れたからだ。  時間をかけて築かれた絆があるからこそ、須藤は佑月に対してとても優しく、そして過剰にもなる。なるほどと胸にストンと落ちていく感覚だった。もっと早く聞いておけば良かったとさえ思った。

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