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第145話

「ふ……んぁ……」  佑月の鼻から甘い吐息がもれる。静かな車中には、お互いが夢中になっている息遣いしか聞こえない。須藤の舌は佑月の咥内を知り尽くしていて、何処が気持ちいいのか全て把握している。  上顎、舌の裏筋が特に佑月は感じて、須藤の愛撫に下半身には甘い痺れが走りっぱなしだった。  やはり、須藤が好きなのだと佑月の脳も心も身体も、全てが訴えてくる。 「佑月……」  須藤は箍が外れたかのように、佑月へと覆い被さってきた。 「ぁ……すど……」  喋る間も与えないように、佑月の口を塞ぐようにキスをしてくる。シートに押し倒された上に身体をまさぐられ、佑月は少しパニックになった。 「ん……んん!」  須藤の腕を必死に叩くと、我に返ったのか須藤はハッとしたように唇を解いた。 「悪い……」  佑月の背中を支えながら、ゆっくり身体を起こしてくれた須藤に、佑月は慌てて首を振る。 「ち、違います! 謝らないでください。ただ、ちょっとビックリして……。その、イヤとかではなくて、ここでは流石に……」  佑月は火照った頬を手で扇ぎながら、チラリと窓の外を見た。佑月もいま気が付いたのだが、もう事務所前に車は付けられていた。  須藤が珍しく驚いたように窓の外を見ている。 「……着いてたのか」  そう言って少し残念そうに須藤が苦笑を浮かべた。佑月だってまだ須藤の傍にいたい。もっと触れていて欲しい。だが須藤にはまだ仕事がある。佑月はこの後パーティで夜まで同行する予定だったため、もう仕事はないが。新規の客が訪れてくれるのを待つだけだ。 (あ……須藤さん)  佑月の下腹部もかなり熱くなっているが、須藤の下腹部にも熱が集中している。それを見た佑月の身体が、何か疼くような感覚を覚え始めた。特にお尻に。どうにかしたくて、して欲しくて、佑月は無意識に須藤を見つめてしまっていた。 「佑月……頼むから煽らないでくれ」 「え……煽る? ちょっ、何ですか?」  突然須藤の大きな手が伸びてきて、目隠しをされてしまう。何も見えなくなった中で、佑月はどうしたのだと首を捻る。 「須藤さん、手を離してください。煽るってなに……む……」  目隠しをされたまま、キスをされた。何度か啄むキスをすると、次に須藤は甘い低音を耳朶に吹き込んでくる。 「また仕事終わる頃に迎えに行く」 「は……はい」  腰も脳も蕩けそうになるほどの良い声。佑月は半ば恍惚とした状態で、真山が開けてくれたドアから降りた。そして真山が微笑を浮かべながら、佑月へと頭を下げると、運転席へと戻っていった。  事務所に着いてから数分以上は経っていたのに、真山はしっかり空気を読んでいたようで、申し訳ない程の配慮を頂いていた。  佑月は二人が乗るマイバッハに深く頭を下げて、視界から消えるまで見送った。

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