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第147話《運命の赤い糸》
「え……でもなんか……」
花が言いづらそうにしながらも、どこか納得出来ていないような顔をしている。
「佑月、帰れるのなら早く仕度しろ」
須藤が佑月の細い腰に腕を回すようにして、佑月へのデスクへと促す。三人は須藤の腕を凝視している。佑月は頷くと直ぐにデスクへと向かい、パソコンの電源や鞄の用意、金庫の施錠チェックをしていく。その間、佑月は三人の様子が気になって仕方がなかった。
(もしかして三人って、俺と須藤さんの関係を知っている……?)
そう思うと、三人の反応に合点がいく。でも面と向かってそれは聞きにくい。聞きにくいが、もし知っていたなら、彼らはとても沢山の事でサポートしてくれていたり、心の支えにもなってくれていたのでは。
「あのさ……」
佑月は三人の側に寄ると、手招きをして身を寄せ合うように円を作る。
「彼とのこと……色々気を使わせてごめんな? ありがとう」
コソコソとして須藤に対して感じ悪くなってしまっているが、本人に聞かれるというのはまだ佑月には羞恥が勝 ってしまう。
「成海さん……それって!」
花が目を潤ませる。佑月は少し照れくさくて、苦笑のような笑みになってしまいながらも頷いた。
「記憶はさっきも言った通り、全くダメなんだけど、でも……」
「すごい! すごいです!! やっぱりお二人は強い運命の赤い糸で結ばれてるんですね! 私……本当に嬉しいです」
恥ずかしかった思いが一気に消えていく。それほどに花の気持ちが純粋で、優しくて、愛があると分かったからだ。花の涙がとても美しい。
「ありがとう……本当に」
三人もずっともどかしい思いでいただろう。言いたくても言えず、友達だと言わされて、本当に苦しかったに違いない。佑月はありったけの想いをぶつける様に、三人を抱きしめた。
「本当に……俺はみんなに支えられてたんだって実感しました」
帰りの車中、いつもより須藤と距離が近いことに、嬉しいような、まだ恥ずかしいような、そんな緊張感に包まれていた。以前までは、佑月が意識的にドア側にぴったりくっ付いていたこともあるが。
「そうだな。でもそれはお前だけに限らず、誰がどんな状況に陥っても、みな必ずそうするだろ」
「はい、必ずそうしますね。あの……ありがとうございます」
きっと須藤は、申し訳ないだとか佑月が自責の念に苛まれないように言ってくれたのだろう。その気遣いにも佑月の心は温かくなった。
須藤のマンションに着き、佑月は夕飯を作ろうとキッチンへ向かおうとした。そのとき、須藤に手首を掴まれる。
「須藤……さん?」
須藤へと振り向いた瞬間には口を塞がれていた。いきなり濃厚なキスをされ、佑月の舌はついていけず、もたついてしまっている。
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