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第155話
小一時間ほど二人は寝ただろうか。朝八時には目を覚まし、須藤が先にシャワーを浴びに行った。このシャワーの件も、須藤はなかなか佑月の言うことに折れてくれず、苦労したものだ。
「それにしても……本当に須藤さんと……したんだな」
いつの間にか綺麗になっているシーツの上で、佑月は手を滑らせていった。須藤が隣にいた証の温もりに触れると、ホッとする。
尻の痛みはあまりないが、まだ何か挟まっているような違和感は強烈にある。でもそれが夢ではなくて、現実なのだと教えてくれた。
「でも……これ仕事出来るかな」
腰は痛いし、身体はダルい。だけど須藤がシャワーから帰ってきたら、自分もちゃんと歩ける事をアピールしないと、断った意味がなくなる。
「よし……」
佑月はゆっくりと上半身を起こす。
「うっ……いったぁ」
あまりの痛怠さに佑月は目を瞬 いた。痛みに少し悶絶してから深呼吸をして、佑月はゆっくりと、広いベッドの上を尻でずっていく。
今日の何でも屋の仕事は、力仕事があるような依頼はなかった。飛び入りでの依頼も、今日は入れられない程のスケジュールだったはず。佑月は今日の仕事内容に安堵した。
「男同士のセックスって……本当に気力と体力がいるんだな……」
自身の柔弱さには、ほとほと呆れる。須藤は見た目から雄々しく、誰が見ても逞しい。須藤に抱かれたいと思う人間は、男女問わずに多いだろう。だけど佑月の身体は、どう頑張っても須藤のような身体にはなれない。
「でも腹筋とか少し引き締まってるんだよな……」
自分の白い腹を摩りながら、佑月は首を傾げる。その時扉が開いて須藤が入ってきたが、佑月を見て眉を少し寄せながら、足早に傍へとやって来た。
「どうした? 腹が痛いのか?」
佑月の隣へと腰を下ろすと、心配そうに須藤は佑月の腹を摩ってくれる。
「いえ、お腹は大丈夫です。勘違いさせてすみません」
慌てて佑月が手を振りながら言うと、須藤は〝ではどうした?〟と目で問うてきた。
「ただ、なんかお腹とか腕が少し筋肉がついてる様な気がして。腹筋はめちゃくちゃ割れてるわけじゃないですが、なんか薄らと」
「あぁ」
須藤には思い当たる節があるのか、佑月の腹を撫でながら少し笑う。
「それは真山から護身術を学んでいたからな。だからだろ」
「ほ、本当ですか? 真山さんに……すごい」
佑月はテンションが上がる。滝川からではなくて、あの真山から学ぶなど少しシュールな気がするが、佑月は嬉しかった。
「また稽古つけて欲しいですが、真山さんもかなりお忙しいし……」
「俺が教えてやろうか?」
「本当ですか!?」
佑月は更にテンションが上がった。須藤なら真山よりは気兼ねなく頼れそうだ。
しかし須藤の内心では、佑月のような純粋さが無いことに、もちろん気づくわけがなかった。
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