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第161話
「え……しないんですか?」
思っていなかった返答に、佑月は思わずとそう訊ねてしまっていた。須藤の動きが一瞬止まる。
「してもいいのか? いきなり続け様ではお前が辛いだろうと思ったが」
「そ、そうだったんですね……。配慮ありがとうございますっ!」
佑月は言い終わる前にシーツを頭から被った。これでは〝したかった〟と言っているようなものだ。あまりの羞恥で、佑月はここら飛び出ていきたい気持ちだった。
正直、昨夜は須藤が優しく丁寧に抱いてくれたお陰か、後ろは然程痛くない。普段須藤がどう佑月を抱くのか、それは分からないが、きっと昨夜は気持ち初心者の佑月には優しくしてくれたはずだ。現にそう感じているから。だから須藤が心配する程、身体には負担がない。
「佑月」
愛しい男が名を呼ぶ。その手は佑月の身体のラインを辿っていく。性的な香りが一気に立ち込めていく。
「……はい」
「お前を愛したいんだが、いいか?」
佑月の胸はキュンと高鳴り、期待している自分がいる中でも、まだ照れがあり、佑月はシーツを目元までしか下げられなかった。
「その訊き方は……ズルいです」
「ズルいか? でもまぁ、本当のことだからな」
須藤はシーツの上から佑月の唇にキスをして、目で窺ってくる。とても須藤らしくない。
「須藤さんって、前からそんな風に……その、訊ねてから……されるんですか?」
何を訊いてるのだと思ったが、どうしても知りたかったのだ。
「時と場合によるな。強引にいく時もあるし、聞く時もある。特に機嫌が悪い時は聞くな」
「え!? ちょっと待ってください。機嫌が悪い時に誘うんですか? ……なんて強者 」
驚きすぎて佑月はすっかり顔をシーツから出してしまう。
「機嫌が悪かろうが良かろうが、可愛い佑月には変わりないからな」
「……」
(甘い! 甘すぎる! え? これって恋人だからこんなに甘くなってるのか?)
佑月は真っ赤になりながら、須藤を見つめたまま固まってしまっていた。
でもやはり、大人で品格も備わっているから、何事にも余裕が持てるのかもしれない。
「こんな風に言われるとむず痒いか?」
「……ん? もしかしてわざと言ったんですか?」
佑月は少し拗ねたように、須藤を睨む。本気で拗ねているわけではないことは、須藤も分かっているようで、微妙に口角が上がっている。
「そういう人の反応見て楽しむの、好きじゃないって言ったのに」
「楽しんでいるわけではないが。可愛いからついな」
「同じじゃないですか、それ」
二人は顔を寄せ合い、クスクスと笑って、自然と唇を合わせいた。
結局今夜も二人は熱い熱い一夜を過ごすことになった──。
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