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第178話《本気……!?①》
翌朝はいつものように佑月が早く起きて朝食を作り、須藤を起こしにいく。昨夜は早く寝たこともあり、須藤にとっては結構な睡眠時間になっている。
(六時間は寝てるんじゃないかな。たぶん起きてそうだな)
寝室の扉を開けると、思っていた通りに須藤は既に起きており、ベッドから出てガウンを羽織っているところだった。
「やっぱり起きてた。おはよう仁」
「おはよう。昨夜は早く寝たからな。起こされる前に目が覚めた」
佑月は須藤に微笑みながらも、昨夜のことがあり、少し居た堪れない。須藤の横でオナニー──未遂だが──など、大それたことをしてしまった。
「お前は? よく寝られたのか?」
「え……あ、うん、寝られたよ」
一瞬昨夜の自慰がバレていたのかと焦ってしまった。だけど須藤なら、起きていたらあの時に何かしらアクションはしている。それもなかったし、今もそんな空気は感じられない。バレてはいなさそうだと佑月は心底にホッとした。
須藤と一緒に部屋を出て、洗面ルームへ行く須藤について行く。すると不意に須藤が佑月の顔を覗き込んできた。
「嘘をつけ。疲れた顔をしている」
佑月はピタリと立ち止まる。そして暫く二人の視線が絡み合った。
「初日からそれでは先が思いやられるな。睡眠さえもしっかり取れないようでは、ここから出すわけにはいかなくなってくる」
どういうこじつけだと思うが、それが須藤仁だ。自分のやりたいようにする。こういう相変わらずな面を見ると佑月はホッとした。
「仁って何気に軟禁とか好きだよね」
「俺は常にお前をここに閉じ込めておきたいと思ってる」
佑月は笑って言うが、須藤は至極真面目な顔つきだ。そうは言っても、きっと本気ではしないはずだと高を括る。
「でも本気ではやらないだろ?」
「どうかな」
須藤が少しにやけて言うが、佑月は薄ら寒いものを感じた。
(え? マジのやつ?)
軟禁に近いことはされた事がある。だから何か、須藤の中で我慢ならないことがあれば、本当にしてしまうかもしれない。
「お、俺も……実は、仁のこと閉じ込めておきたいって思ってるよ?」
初めは須藤も少しはビビればいいという思いでそう言ったが、徐々に佑月も出来るならそうしたいと思い始めた。
毎日忙しくする須藤を見ていると、本当に閉じ込めて、強制的に休ませたくなる。そして二人で丸一日ゆっくりとしたい。
須藤とは温泉──形だけの──行ったり、別荘で一週間軟禁状態にされたことはある。だけど一年弱付き合ってきて、丸一日一緒にいたのが、たったの八日間とは悲しすぎる。遠恋の恋人だって、もう少し会っているのでは。だから可能なら、どこか二人でゆっくりとデートというものがしたかった。
「お前に監禁されるのも、やぶさかではないな。今からそうするか?」
須藤はそう言うと、顔を洗い、歯を磨く。その様子をずっと横で見ながら、佑月は想像して秘かに高揚していた。想像するだけなら無料 だ。
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