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第179話《本気……!?②》

 朝から晩まで二人一緒。仕事から帰ってきても須藤が部屋にいる。何なら、下手なりにも料理をしてくれるとか。佑月の中で次々と楽しい妄想が広がっていく。 「本当にいいの? やるよ? 後悔しても遅いけど」  佑月も本気では言っていない。こんな事は夢のまた夢だからだ。 「あぁ、いいぞ。その前に、真山に連絡くらいは入れさせてくれ」 「え……」  須藤はシャワーを浴びる前に連絡をと思っているのか、一旦部屋へ戻ってスマホ持って戻ってきた。 「仁……? どこに電話するんだ? まさか本当に真山さんに?」 「あぁ」  返事するや直ぐにスマホを操作して、須藤はスマホを耳にあてている。 「真山、今日から暫く休む──」 「ま、真山さん、おはようございます! 今のは冗談です! 申し訳ございません! 失礼します」  須藤から奪い取ったスマホの通話終了ボタンを、直ぐに佑月はタップする。突然まくし立てるように話す佑月に、さぞかし真山は驚いたことだろう。胸中で詫びながら、佑月はスマホを須藤の手に返した。 「なんだ、冗談だったのか?」  須藤は怪訝そうな顔で佑月を見てくる。その顔を見ると、須藤が本気で言っていたことが分かった。 「……というか、仁が本当に本気だとは思ってなかったから、俺も調子に乗って言ってしまっただけで……」 「一週間くらいまでなら、お前が言えば直ぐに時間くらい空ける。遠慮はするな」  須藤はそう言うと、スマホを広い洗面台に置いて、佑月の目の前でガウンを脱いだ。相変わらずの美しく逞しい肉体。その身体へと、佑月は衝動的に真正面から抱きついていた。 「仁」 「どうした?」  須藤が優しく両腕で佑月を包み、背中をさすってくれる。この広くて温かい胸も、頼もしい腕も…… 「仁は……俺の仁だよな?」  胸板に頬をくっつける佑月だったが、須藤は佑月の顔を上げさせた。 「当然だ。俺は佑月のものだ。そして佑月は俺のものだ」  以前にも聞いたその言葉を、須藤の口から再び聞いて、佑月は少し安心した。 「うん……ありがとう。ごめん、邪魔して」 「いや。直ぐに出るからそんな顔をするな」  須藤は少し身を屈めて、佑月の唇に初めは軽く触れ合わせた。そこから熱が入ったように深くなっていく。口腔内にはミントの香りが広がっている。須藤の愛撫は宥めるものではなくて、純粋に佑月を求める激しさと温もりがあった。気を緩めると目に熱いものが溢れてきそうだ。  須藤が佑月の言った真の意味を理解していようがいまいが、どっちでもいい。昨日須藤は〝佑月〟は何も変わらず〝佑月〟だと言ってくれていた。須藤の中ではどんな佑月であろうと、愛してくれている。それは本当に至福の言葉だ。  でも佑月にとって些細な変化が、どうしたって不安となって佑月の中を蝕んでいくのだ。  

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