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第181話《再会》

「村上……さん。あの、お会いできますか?」 「リハビリテーションに行ってみないと分からないですけど……。あ、ちょっとお待ちくださいね」  看護師はそう言って、白衣のポケットからスマホを取り出してどこかへかけ始めた。 「成海さん、いいタイミングです。今から村上くん休憩に入るそうですよ」 「そうですか! すみません、わざわざ連絡を取って頂いて。ありがとうございます」  看護師は最後まで笑顔を絶やさず、リハビリテーション科まで案内してくれた。  待合室に着くと中からガタイのいい一人の男が出てきた。きっとあの男が村上だろう。佑月と目が合うと、村上らしき男の目が大きく見開かれた。久しぶりに会う驚きにしては、何だか妙だなと佑月は感じた。 「村上くん休憩行くところごめんね。えっと、実はあの成海さんが来てくださって……」  看護師は村上の側へ行き、説明をしてくれている。その間佑月は村上をこっそりと窺った。名前を聞いたときは、なにか軽い頭痛のようなものを覚えたが、いまは本人を目の前にしても何も感じない。ただの頭痛だったようだが、先程の村上の表情が気になった。 「成海さん、少しお話なさっては? 私はここで失礼させて頂くけど、お元気な姿が見られて本当に良かったです。来てくださってありがとうございました」 「いえ、こちらこそお忙しい中、ご配慮頂きありがとうございます」  佑月は感謝を込めて看護師へと深く頭を下げる。看護師は「こんな綺麗な人に頭下げられちゃうなんて」と明るく言いながら、仕事へと戻って行った。 「あ……じゃあ、成海く……成海さん、こちらのソファでもいいですか?」 「あ、はい。すみません、休憩をお邪魔して申し訳ございません。お時間は取らせませんので」  二人並んでソファに腰を下ろすが、村上から少しぎこちなさを感じる。仲が良かったと先程の看護師は言っていたが、とてもそうは思えない態度だ。  何かあったのか。もしかして来てはまずかったかと、佑月は少し気後れしそうになる。 「記憶が……今は無いと今泉さん……あ、さっきの看護師なんですが、聞いて正直驚いてます」  村上は膝の上で組んだ両手を開いたり握ったりと、やはり少し緊張しているようだと知る。 「先程の看護師さん、今泉さんと仰るんですね、その今泉さんから村上先生とは仲が良かったとお伺いしていて……その、忘れてしまって、本当にすみません」 「い、いえいえ、それは仕方のないことですし。以前の記憶が戻られた事は、本当に良かったと、僕も心から嬉しく思います。僕と成海さんは歳が一緒だったので、結構おしゃべりさせて頂いてたんですよ。それに成海さんは本当に芸能人かと思うほどに、いやそれ以上に綺麗な人だから、院内では誰もが知るプリンスだったんですよ」 「プリンス……そ、そうなんですか。なんだか、とても恥ずかしいですね。僕は何か我儘言ったり、困らせたりしてませんでしたか? そうだとしたら本当に申し訳なかったです」  佑月が少し頭を下げると、村上は途端に両手を振って、慌てたような顔をした。

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