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第185話

「会ったのか?」  須藤の声に僅かだが、本当に僅かにだが棘が含まれている。やはり何かがあり、須藤は村上を良く思っていない。それだけではない何かも感じるが、須藤は知られたくない感情にはしっかりと蓋をしてしまう。だから佑月の勝手な解釈とも言える。でも須藤との付き合いで、佑月もそれなりに須藤の空気を感じられるようになった。だからあながち間違ってはいないのかもしれない。 「うん。会ったけど、本人目の前にしても何も感じなかった」 「そうか……」 「仁のその様子からして、きっと村上先生とは何かあったんだと思う。先生もちょっとぎこちなかったし。でも今はその理由は聞かない」  須藤の表情はそれでも晴れない。だけど佑月はここで終了だと話を切り上げた。 「明日はどうするんだ?」  綺麗に平らげてくれた夕食。ハンバーグは生まれて初めて食べたと須藤は言っていた。確かに須藤とハンバーグ……何か似合わない。食べてもらえて良かったと嬉しく思いながら、何気なく明日の予定を口にする。 「明日は午前中に、颯と現場になったあの倉庫へ行ってくる」  そう伝えると須藤の顔が明らかに不機嫌な顔となる。元凶となった現場へ行くことに、反対なのだろうかと思った佑月だったが……。 「二人で行くのか?」  先程より更に低音になる須藤の声。 「え……あ、うん。颯が車を出してくれるんだけど」 「俺も行くぞ」 「え!?」  驚きの声を上げると、須藤の眉が益々眉間へと寄せられていく。 「なんだ、俺が行くと何か不都合でもあるのか?」  佑月は咄嗟に首を振る。 「まさか! 不都合なんてあるわけないだろ。ただ仁の仕事の方は大丈夫なの?」 「問題ない」 「わ、分かった。颯にも言っておく」  失念していた。須藤は颯のことをあまり良く思っていない。ただの親友だと言っても、陸斗らとは違って敵視している節がある。それも、佑月が颯といる時はいつもタイミングが悪いのだ。お互いに軽いスキンシップをしている時に目撃されている。だから須藤の中で颯は、要注意人物として見られているのだ。 「仁も一緒だと心強いな」  佑月は幸せオーラ全開に、笑顔を向けて須藤に言う。すると須藤の眉間のシワは綺麗に取れていく。 (良かった。少しは機嫌直ったようだ)  実際佑月も須藤が綺麗な男性と過剰なスキンシップをしていたら、そんなものを目の当たりにしたら、嫉妬の嵐が起きそうだ。とても心穏やかになどいられない。だけど佑月にとって颯は大事な親友だ。だから須藤の前では、細心の注意を払うしかない。  翌朝、須藤のマンションの地下駐車場に車を止めて、颯が来てくれた。まだ八時前という早い時間だが、佑月の依頼の仕事が昼前には入っているため、やむなく朝にしたのだ。 「颯、おはよう。今日はありがとうな。その色々と……」  最後の言葉だけは、佑月の後ろに立つ須藤に聞こえないように小さく言う。颯は佑月に目配せをしてから、須藤へと視線を向けた。

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