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第16話

「そう言われましても……あの子は私のものなので。」 「分かりました。1度アルを連れてきます。」 ものという言い方には引っかかるが、アルがこの男の元へ行くべきなのは確かだろう。 「少し待っていてください」 もう、俺がアルを手放したくない。 アルが戻りたいなんて言ったらどうしようか。 部屋に入ると、アルは膝を抱えて丸まっていた。 アル、と声をかけるとぱっと振り向く。 「ごめんね。時間かかって。」 「大丈夫です……」 「フェルって天使、分かる?今からあって欲しいんだけど」 「知り、ません。でも、会います」 少し怖がっているようなアルを抱き上げて、廊下に出る。 天使がアルを傷つけたのでは無ければいいが。 「待たせてすみません、フェルさん。」 「いえいえ。ああっ、だいぶ綺麗になりましたね」 アルの頬を撫でようとした腕をたたき落とした。 まだ、アルは怖いようだから。 「私のことは覚えていませんか……」 フェルはすばやくアルの頬を叩いた。 止める暇もないほど早く、パンという音が響く。 アルは呆然と、頬を抑えた。 「74番」 「あ、ぁあ、フェルさ…ま……」 数字をフェルが言った途端、アルははっと目を見開いた。 「アルに何をした」 「記憶を呼び起こしてあげただけですよ。嫌な記憶は消していたようなので 74番、私と共に帰りますね?」 「はい」 アルの目は虚ろになり何もうつしていない。

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