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第18話

「そうか。俺もアルと一緒にいたい。フェルさん、アルを解放してくれませんか?」 「その子は私にとっても特別でして。お気に入りなんです。返してくださるなら、もっと良い天使か悪魔もご紹介できますよ?」 「俺にアル以上はないんです」 天使でも悪魔でも人間でもアルより俺を(とりこ)にする者はいない。 フェルはまたしても笑い、ゆったりと近づいてきた。 フェルが俺の指をつかんだ時、アルがひっと息を飲んだ。 同時に小指をおそう強烈な痛み。 折られたのだと理解するまでしばし時間がかかった。 「アル!落ち着け、俺は痛くないから。ほら、ゆっくり呼吸してみな?大丈夫だから。」 「さて、何本目で私に付いてきたいと言いますか?」 次は薬指を持たれた。 先程とは違い、折られると分かっているからやっぱり少し怖い。 焦った顔で開いたアルの口を俺の口で塞ぐ。 すでにアルはぼろぼろと涙をこぼし、必死にもがいている。 ぼきっという音が耳に響き、抑えきれない声のせいでアルから口を離してしまった。 「天よ!矢を!」 「何を……」 その瞬間何十本もの光がおりてきて、フェルを突き刺した。 「ぐぅぅつああああ!?おまえぇぇぇぇ!なぜぇ!?」 最後に怨みの言葉を残すと、光の粒となって空に舞い上がっていった。 「朔っ朔っ!指!冷やさないとっ!」 アルは俺の腕からもがき降りると、よろよろとした足取りで氷を取りに行った。 俺は痛みも鈍るほど頭がごちゃごちゃしている。

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