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眉を顰め、睨み付けてから溜め息を漏らし、徐に茶碗を持ち上げる。
不満そうに、口を尖らせながらも箸を進め、炊きたての白米からはもうもうと湯気が立ち上っている。
少量含めば、噛めば噛む程にじんわりと甘みが広がり、それだけで殺気立っていた気持ちが若干鳴りを潜める。
美味い、と思わず呟き、続けて玉子焼きを取り上げて口にすれば、ふんわりとした食感から仄かな甘みが広がっていく。
やっぱミハルの玉子焼きうめえわ、と思いながらがつがつ食べ、すっかり頬が緩んで堪能してしまう。
旺盛な食べっぷりに、向かいではミハルが箸を止め、すっかり上機嫌な姿を眺めて微笑を湛えている。
「そんなにうめえの?」
「絶品」
「そりゃどうも。弟君にも今度ご馳走してやろうかな」
「ハァ? いいって、すんなよ。アイツにお前の手料理は勿体無い。つうか、今その話すんな。せっかくの飯が不味くなんだろ」
「あらら、随分と嫌われてるようで。そんなに仲悪かったっけ? 何がそんなに気に入らねえんだか。よく出来た弟じゃん」
「出来の悪い兄と違って?」
「ハハッ、んなこと言ってねえだろ。何むくれてんだよ、機嫌直せって」
「別に怒ってねえよ。それにまあ、確かにアイツはよく出来た弟だからな。ホントご立派、ご立派」
他人事だな、と笑うミハルを余所に、味噌汁を啜りつつ白米を頬張る。
実際、塁は本当によく出来た弟だ。
悪い噂なんて聞かず、誰から見ても社交的で人気があり、分け隔てなく接していつも朗らかである。
生徒会に属し、文武両道で顔立ちも整っており、何をさせてもそつが無い。
次期生徒会長と囁かれ、教師からも一目置かれるような始末で、一体何処に死角があるというのだろう。
俺からしてみれば欠陥だらけだけどな……。
焼き鮭を口にし、苦虫を噛み潰したような表情で、憎たらしい弟をつい思い浮かべてしまう。
アイツの、何処に、惹かれろと……?
玄関先でいきなり襲ってくるような奴だぞ? なんなんだ、アイツは?
考えれば考える程、再び不機嫌になって眉根を寄せ、どいつもこいつも簡単に騙されやがってと腹立たしい事この上ない。
「どうした? また眉間に皺寄ってるぞ」
「うるせえ、ほっとけ。お前のせいでやなこと思い出した」
「何それ、何かあった?」
「くだらねえ事だよ」
飯を掻き込み、黙々と咀嚼しながら視線を逸らし、窓の外を見つめる。
いっそぶちまけてしまいたい、だが此方の分が悪くなるばかりで情けなく、そもそも弟に掘られたなんて話をどんな顔で友人にすればいいのだろうか。
それに結構……、気持ち良くなっちまったし……。
と考えてからハッとし、いやそんな事ねえからとますます眉根を寄せ、あの野郎をぶん殴ってやりたいと密かに拳を震わせる。
『可愛い……、兄貴』
余韻を湛えた声が、ねっとりと耳朶 に絡み付いて離れず、ふとした拍子に思い出して硬直する。
艶を孕んで、甘やかに食まれて、舌を滑らせて口付けて、誰にも聞かせず、見せたこともないような表情で、声音で、色香を湛えて此 の身へと覆い被さり、いつまでもいつまでも求めては熱い迸りを混ぜ合わせた。
「曖希……?」
「え」
「どうした? ぼうっとして」
「あ……、いや、ごちそうさま。美味かった」
「おう」
笑むミハルを前に、鼓膜を擽られた声を思い起こし、急に鼓動が速まる。
最悪だ、とは思いながらも身体が火照り、集まる熱が言うことを聞かない。
ぞくぞくと背筋が戦慄き、滑らせた指先の感触までもを思い出すように劣情が立ち込め、居ても立ってもいられなくなる。
「じゃ、ぼちぼち片しますか」
異変には気付かぬミハルが、自身も食べ終えて食器を手にし、立ち上がって台所へと持っていく。
後ろ姿を見送り、むず痒い感覚をやり過ごしながら箸や茶碗を持ち、彼が振り向かぬよう祈りつつ近付く。
脇から流しへと片手で置き、サンキュと言われるも何にも言えずに踵を返し、速足でトイレに直行する。
「くそ……、最低だ」
扉を閉め、鍵を掛けて見下ろせば、いつの間にか熱を孕んでいた下腹部が主張し、生地を盛り上げて朝から劣情を纏っている。
どうしてこんな事に、とは思うも原因は一つであり、認めたくはないのにまたしても脳裏を過る。
『俺のこと好き……?』
「ん……」
『兄貴……、答えて』
いけないと分かっていても、今更昂りを抑えるなんて到底出来ず、導かれるようにおずおずと手を伸ばし、差し入れてからすでに熱を孕んでいた自身を晒す。
振り払おうとしても、囁かれた数々を思い出す度に熱情が絡み付き、先を指で弄くれば痺れるような快感が背筋を駆けていく。
なんで……、俺……、こんな……。
ダメだ、と思っても手を止められず、蕩けた眼差しにはぐちぐちと擦られる自身が映り、一枚隔てた向こうからは時おりカチャカチャと食器が鳴っている。
「はぁっ、は……、ん」
忌々しい記憶なのに、歓喜するように先からは涎が溢れ、自身へと絡み付く手をけがしてはぐちゅぐちゅと淫らな音を立てる。
どうしようもなく興奮して、唇からは熱っぽい吐息が零れ落ちて、とぷとぷと淫猥な蜜が流れていく。
「ん……」
流す水と、食器の音を遠くに聞きながら、声を抑えて淫らな自慰に耽り、かりと先端を爪で引っ掻く。
じんわりと甘やかな痺れが走り、焦らすような快感を与えながらも竿を擦り、もっと欲しい、足りないと舌を見せながら息づく。
もっと気持ち良かった、もっと激しかった、もっと、もっとと弄ぶ手が獰猛になり、ずるずるとしゃがみ込んで扉を背にしながら荒く息を漏らし、頬を染める。
憎い、嫌いなのに、耳元で囁かれた声を思い出して身体を熱くさせ、一心不乱に白濁を溢れさせる。
塁、塁と淫らな声が勝手に紡ぎ、それがまたずくんと疼きを増す結果となり、一方の手が更なる快楽を求めて下がっていく。
くちゅくちゅと白濁を滑らせ、自身を擦って熱情を煽り、促されるように探る手がすぼまりに行き着く。
つぷ、と指先を孕ませても思うような快感は得られず、それでもすでに昂りは容赦なく追い詰められており、覚束無い手付きでも十分な助力となって白濁を吐露させていく。
ちがう、ちがった……、こんなんじゃ、なかった……。
でも気持ち良くて、憑かれたように荒々しく行き来させ、いつしか足を開き我を失って昂りを弄る。
やんわりと丸みを揉み、そうしてすぼまりにつぷつぷと指先を出入りさせ、自身からは蜜が零れる。
はあ、と甘ったるい吐息が漏れ、どうしてこんな事になっているのか分からなくても今だけはどうでも良く、いきたいけどもう少し感じていたいと下腹部をまさぐって蕩けていく。
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