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02異能特務課
七夕だと?其れが如何したっつうんだよ。収まらない怒りの儘帰路に着こうと車に乗り込むと後部座席に見知らぬ男が座って居た。
「――誰だ? 手前……」
厭、其の姿は記憶に在った。四年前迄太宰と良く連んで居た奴だ。丸い眼鏡に舐めた様な垂れ目。名前は確か――
「坂口、安吾か」
「ご記憶頂けて幸いです」
異能特務課、坂口安吾。其の男はずり落ち掛かった眼鏡の縁を指先で持ち上げる。何で異能特務課が此処に?元々此の男は二重間諜をしていやがった野郎だ。俺の顔なんざ知っていて当たり前だろうが――
「太宰君なら、今私の処に居ます」
分厚い手帳を閉じ乍ら其の男は云った。
「何、だと……」
太宰が、異能特務課の処に?探偵社でも無ェ、ポートマフィアでも無く彼奴が姿を隠せるような場所は確かに政府機関くれえだろうが。でもだけど何で?掴まったのか?彼奴は今やポートマフィアとは関係の無い探偵社の人間だろう。一体何をやらかしたら――
「そんなに怖い顔をしないで下さい。、言葉が足りなかった様ですね、太宰君が居るのは異能特務課ではなく、僕の自宅です」
見透かした様に其の男は云った。
「太宰が、手前ンとこに何で……」
「――本当に、何もご存知無いんですね貴方は」
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