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「ところであおいも、RIONに失恋したクチなの?」
「えっ?」
なんかすごくさらっと聞かれたんだけど。俺が理音くんに失恋って……なんで?
「あれ、違った? いや、さっき俺が声かける前なんかすっげー思いつめた顔してたから失恋でもしたのかなーって思ってさ。違ってたらゴメン!」
「……失恋は、あってる。けど相手は理音くんじゃないよ。そういえば前に理音くんにも勘違いされたことがあったなぁ、俺がワンコのこと好きなんじゃないかって。いや、ワンコが俺のこと好きなんじゃないか、だったかな……」
「あははっ、何だそれ! RIONそんな勘違いしてたんだ!? マジウケるし……その話も詳しく聞きたいところだけど、俺は今はあおいのことが知りたいな。あおいを振った相手はどんな奴なの?」
なんで、そんなに俺のことが知りたいんだろう。それにさっき『あおいも』って言ったな、シンジ……ってことは、シンジは理音くんのことが好きだったんだ。
まぁ、あのブログの一件でなんとなく分かってたけど、冗談とかじゃなかったんだな。
「うちの学校の保健室の先生……オトナの男の人」
何故か俺は、馬鹿正直に答えていた。
「へぇ、あおいは大人の男が好きなんだ。もしや老け専?」
相手が男、ってとこには特に突っ込まないんだな。俺がゲイってのは最初から分かっていた? そういえばシンジはゲイ……いや、バイ?
「別に老け専じゃないし。ただ、高校生は子どもっぽくてそういう気が起きないだけだよ」
「それって俺も子どものうちに入ってる?」
「え?」
なんで、シンジはそんなギラギラした目を向けてくるんだろうか。
どこにでもいる、一般人の俺なんかに。
ヤバい、なんかドキドキする。
「シンジは高校生には見えないから……べつに、」
「ハハ。それはあおいの範囲内って受け取ってもいいの?」
「好きに、取れば」
《ギュッ》
「!?」
いきなり、テーブルの上に置いていた手を握られた。思わずびくっとして手を引こうとしたけど、シンジの力は意外と強かった。
「似たようなタイミングで失恋した者同士、仲良くしよ? あおい」
自分の持っている武器を全て晒して俺なんかを誘うなんて……。
失恋の傷を癒してくれる相手なんか他にいくらでもいるだろう、千歳シンジ。
なんで俺?もしかして俺、ホントにシンジに見初められたんじゃ――
そんなおめでたい勘違いをしかけた俺の耳に、隣の席の女の子たちの会話がやけにするっと入ってきた。
「ねぇ、千歳シンジと一緒に居る子さ、ちょっとRIONに雰囲気似てない?」
「ほんとだー、RIONがモデルしてるブランドの服着てるし、綺麗系だね」
俺がシンジに見初められたとか、そんなわけはなかった。
俺は理音くんの代わりってわけね。
それでも……
「いいよ」
大人気モデル様の失恋した相手の代わりになれるなんて、光栄です。
俺は握られた手を軽く握り返して、千歳シンジからの誘いを受けた。
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