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その時だった。俺の耳に、少し懐かしい声が聞こえたのは。 「……………宇佐木?」 顔をあげて、名前を呼ばれた方を見る。そこには、知らない女の人と連れ立っている―― 「小野、先生……?」 俺の好きだった人、がいた……。 「先生?あおいの学校の先生?」 「あ……う、ん……」 なんで、なんで先生がこんなとこに居るんだよ。いや休日だし遊園地だし先生結婚前だし、居ても何一つおかしいことは無いんだけど。 でもどうして、なんで、よりによって俺が来てる日に、シンジと一緒と居る時に、なんて……最悪の、タイミングだ。 「うっわー……やっぱ休日に遊園地なんて来るもんじゃねぇな、生徒に会うとかマジで何の冗談だよ。家でゴロゴロしときゃよかった」 うんざりしたような顔で言う小野先生。その表情は、少し前まで俺と保健室で接してくれた時と何も変わりない。 俺の気持ちを知りながら、近づけさせることも遠ざけることもしない、優しさなのかなんなのかよく分からない、曖昧な先生の態度。 でも俺は、こんな飄々とした態度の先生が大好きだった。 好きで、好きで、たまらなかった。 ――2年間も。 「もう弘和さん、失礼でしょ!……えっと、二人とも生徒さん?この人がいつもお世話になってますー!」 隣の女の人が一歩前に出て、俺達に向かって頭を下げた。年齢は先生と同じくらいか、少し年下かな……。 「違ぇよ、お世話してんのはむしろ俺のほうだっつーの!それと金髪の方だけな、俺の生徒は。……ん?宇佐木のダチ、どっかで見たことあるな……」 「き……きゃーっっ!!千歳シンジくんじゃない!?モデルの!?わぁ、本物!!?」 「え、やっぱ有名人か?」 「何で知らないのよ!テレビのコマーシャルにだって出てるし、とにかくいま若い子に超人気のモデルさんよ!!」 「へえぇ……」 「どうも、初めまして」 営業用の笑顔でニッコリ笑いながら、シンジは二人に挨拶した。

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