36 / 52
26
*
「ジェットコースター……?」
シンジが俺を連れてきた場所は、始めに乗ったのとは違うジェットコースター、絶叫マシンだった。なんでまたこんな場所に……?
疑問符を浮かべる俺を無視して、シンジは『並ぶよ』と俺の手を引く。離れなきゃって思ってるのに、手が振りほどけない。それはシンジの力が強いから、だけじゃない。
俺が振りほどきたくないからだ。頭では分かってるのに、身体が言うことを聞かない……。
「ねえ、あれ千歳シンジじゃない?」
「わ、ほんとだめっちゃイケメン!!」
こんな目立つとこにいるから、また見つかってるし……。
「あおい」
「な……何」
「周りのこととか、気にしないでいいから」
「え?」
周り気にするなって……無理だろ。ていうか手繋いでるの、見られたらやばいし。隠し撮りされてネットに流されたりしたらどうするんだよ。
でも、シンジは一向に手を緩めてくれる気配はない。何を考えてるんだろう?本当に分からない。
「次のお客様、どうぞー」
係員に促されて、俺達は一番先頭に乗り込んだ。うわ、先頭とか……一番恐いのは最後尾だっていうけど、こっちだって普通に恐いし。
「あおい、……泣けよ」
「えっ?」
「あの先生に失恋したあと、一度も泣いてないんじゃないのか」
「……!」
どうして……
どうして分かったんだ?シンジ……
でも、でも俺は泣かなかったんじゃなくて、泣けなくて――
ガタン、と音を立ててジェットコースターが動き出す。
「この、意地っ張りウサギ」
「は?」
「本当に不器用で……見てられねえんだよ」
「……」
「何?プライド?泣くことで、何かに負けるとでも思ってんのか」
シンジの声は、いつもの優しいト―ンじゃなくて、少し厳しめのトーンだった。俺は、何故か何も言い返せなくて……
じわじわと、ジェットコースターは空に向かって上昇していく。
ともだちにシェアしよう!