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葵はジェットコースター降下中、声をあげて泣いていた。俺が泣けって言ったから。
悲痛な声と涙が俺の方へと降ってきて、今すぐ抱きしめたいと思った。
幸い、絶叫マシンはそれ自体の音も大きいので、葵が泣き叫ぶ声は周りにはあまり聞こえなかったと思う。というか、絶叫マシンに恐がって泣いているようにしか見えなかっただろう。
降りた後、葵の腰を抱き寄せて頭をくっつけてよしよしってしてやったけど、特に嫌がられることは無かった。さっきまではしきりに周りを気にしていたんだけどな。……別に、気にしなくたっていいのに。
俺のファンは、俺がバイだってことは気付いている。ちょっと前にRIONに気があります、みたいなこともブログに書いたし。
葵は素人さんだから、隠し撮りされて晒されたりしたら大変だけど……。
そんなことになったら、晒した人間は必ず見つけ出して訴えるけどな。場所も限定されてるから簡単だろう。でも俺のことを知ってるのは俺のファンだけだから(一般的な知名度はまだ低いと思う)そんなことをする人はいない、と信じたい。
俺が男の恋人とデートしてた、って書かれるくらいなら全然構わないんだけど。既成事実、みたいな?
「……シンジ……」
「なに?あおい」
葵は泣きすぎて、目を真っ赤に腫らしてる。赤くなったそこを舐めてあげたいと思った。
「どこ行くんだよ……」
「このパーク内のホテル。休憩しよ?一泊してもいいけど」
「………」
ホテルに連れ込んで、いやらしいことをする気は満々だ。俺は葵を泣かせたから、これから思い切り甘やかしてあげないといけない。握った手を振り払わないところを見ると、葵もそれを望んでいるんだと思う。
なんて、俺の都合のいい妄想かな?
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