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そして葵はジェットコースターの轟音とともに思い切り泣いて――
少しは楽になったんじゃないか、と思うんだけど。本当のところはどうなのか、まだ話してないから分からない。もっというと、慰める目的でこのままなし崩しに抱いてしまっていいのかも分からない。
だって俺は身体目的だって思われてんのに、簡単にセックスしたらダメだろ……。
でも葵がセクシーすぎるのも悪いんだ、全く抵抗しないし。
身体から取り入ったから当たり前かもしれないけど、俺だって不安にはなる。葵は相手が俺じゃなくても簡単に身体を開いていたのかな、と思ったりして……。
いやいや、そんな軽い奴じゃないだろ、葵は。てかそれ俺が言うなって感じだし。
あー、俺って本当、勝手だな。
「はああああ……」
「何、頭抱えてんの?千歳シンジともあろう人が」
「!あおい……」
顔を上げると、葵がシャワーから戻ってきていた。全然気付かなかった。
葵は濡れ髪のままでバスローブを羽織っていた。全体的にほかほかしているが、目元だけはまだほんのりと赤い。それがまた余計に、葵のエロさを引き立てていた。無意識に喉仏が上下してしまう。
ああもう、唾飲み込んでんじゃねぇよ、俺……今日は手は出さないってさっき決めて……ないけど……。
「シンジは?シャワー浴びないの」
「あーうん、じゃあ入ってこようかな」
「何、その煮え切らない返事。千歳シンジなのに」
「俺、別に普通の人だからね?」
なんか『千歳シンジ』がすごい超人みたいな扱いされてるように感じるんだけど……普通の男なんだけどな。人より容姿が優れてる自信はあるけどね、モデルだから。
*
軽くシャワーを浴びて出てきたら、葵はさっき俺が座っていた位置でぼんやりとテレビを見つめていた。なんだか、疲れ切った表情をしている。
そりゃ、疲れたよな……。泣き叫ぶのは結構体力がいると思う。
俺は葵の隣に腰を下ろすと、そっとその身体を抱き寄せた。まだ少し髪が濡れていて、触れたところがひんやりとした。
「あおい、まだ少し髪濡れてる。風邪引くから、ドライヤーを……」
「シンジ」
「ンッ……?」
立ち上がろうとしたら腕を引っ張られて、葵からキスしてきた。
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