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* 気持ちいい、気持ちいい。 シンジが触ってくれるところ全てが。 ねぇ俺、今までこんな風にされたことあった?誰かにここまで想われたことあった? そんな経験、ねぇよ。 恋なんて、こっちが一方的に誰かを好きになるだけ、それだけだと思ってた。自分が相手からも同じように想われるのがどんな感じなのかなんて、想像したこともなかった。 そりゃそうだよな。だって俺が今まで好きになっていたのは、相手がいる人ばかりだった。初恋だった、母親の恋人を筆頭にして。 そんな大人ばかりだったんだ、俺が好きになるのは。 だって仕方ない。あの人たちはみんな、俺に優しくしてくれたんだもん。 『葵くんは、お母さんよりも美人だね』 優しいのはその時だけだって分かってても、嬉しかったんだ、俺。 今まで失恋しても泣けなかったのは、全部本当の恋じゃなかったから? ううん、それだけじゃない。 大人に遊ばれてるのは俺の方だったのに、絶対にそれを認めたくなかったからだ。自分のことしか考えてない、薄汚いオッサンどもと遊んでやってるのは俺の方……。 だから、泣くなんてジョーダンじゃない。 下らない、小さなプライドだ。でもそう思わないと、やってらんねぇじゃん。 自分がふられて可哀想な立場だなんて、思いたくねぇじゃん。 高校生なんてガキっぽい。だから友達なんていらない。 付き合うのも狡いオトナだけでいい。どうせ俺を好きになる人なんていない。 だから俺が、遊んでやるんだ……。 そう思ってた。

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