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でも、小野先生だけは、違った。 俺を叱ってくれた、今まで好きになった人の中で唯一のまともな大人だった。 * 『先生、俺先生のことが好きなんだー。俺のカラダ好きにしていいからさ、ちょっとだけ遊んでくんない?』 『はあ?何言ってんだお前、教師がそんなことできるか!!』 『えー、俺絶対女より先生のこと気持ち良くできる自信あんだけどなぁ』 『もっと自分のカラダ大事にしろ。好きにしろ、じゃねーんだよ馬鹿。まだガキの癖に』 『ガキじゃねぇし……』 『ガキだよ。高校生は高校生同士で遊んでろ。それに俺は残念ながら男には興味ないんだ』 『ふん……それでも俺、諦めないからね!先生』 『不毛な奴だな』 『先のことなんてわかんないじゃん!』 * 小野先生を好きになって、でも全然俺に靡いてくれなくて、初めて『俺、今恋してる』、『これが恋なんだ』って思った。 自分を好きになってくれない相手を想い続けるのはこの上なく切ないし、しんどい。 これが本当の恋なんだ、と浮かれた気持ちのあとにくるのは後悔ばかりだった。 こんなに辛いなら、恋なんてしなきゃよかった、って。俺、本当に馬鹿だよな。 先生が俺を好きになってくれないのは分かってた。それでいいと思って好きになった。それがこんなに辛いなんて、知らなかったから。 でも知ってたら、好きにはならなかった? ううん、そんなの無理。だってそんなの、本当の恋じゃないだろ。

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