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第3話

「僕、お庭の花を見てくる」 「そうか、おまえは花が好きだな。リュウくんを案内してあげなさい」 「え……」    父の顔を見るとどうした?という顔をしていた。そしてリュウは遠慮がちに俺を見ていた。 「……いいよ」 「うん!」  僕とリュウは庭園に向かった。リュウは僕の横で奇妙に動く目を輝かせていた。 「トウヤのことお父様から聞いていたんだ。僕にはとても可愛い許嫁がいるんだって。今日、君に会えて嬉しかった」    まったく、よく喋るカエルだ。何故かリュウといると落ち着かない。僕は一刻も早くきれいな花達を見て癒されたかった。早足で庭に出ると、蔓薔薇やフリージアの白、黄、赤、紫を目にして自然と気持ちが和らいだ。隣にいるリュウが何かを話てるなんて耳にも入ってこなかった。 「トウヤ、運命の番って知ってる? 僕ねトウヤだと思う」  運命の番? 何言ってるんだ? 「……認めない! 僕はおまえなんか認めない! 自分の顔がどんな知ってるのか? 醜い化け物じゃないか!」  振り返りリュウを見た。  え……?  人の姿? 男の子が今にも泣きそうなで下唇を噛んでいた。僕は目を擦りもう一度リュウを見た。今度はあの醜いカエルの姿をしていた。フリージアと蔓薔薇の甘い香りが立ち込める中、微かに違う匂いが混ざる。    落ち着かない……リュウいると心がざわざわする。  僕は慌ててそこから立ち去ろうとした。花壇の煉瓦に足を取られ転びそうになった。 「トウヤ! 危ない!」  リュウが僕の身体を抱き寄せそのまま地面に転がった。 「……痛っ!」 「ト…ヤ……大丈夫?」 「……大丈夫だか…ら……」  リュウを見るとまた人の姿で目から大量の出血をしていた。僕は慌ててリュウの目を付けていたスカーフで押さえた。 「リュウ!!」 「大丈夫だから、君…こそ膝から血が出てる」  リュウが長い舌で僕の膝を舐めた。恐ろしく不気味な顔から血を流す姿を見て思わず叫んでしまった。それを聞きいた執事や父達も駆けつけた。  「リュウくん! どうしたんだ!」 「おじ様、僕が鈍臭くって転んだだけです」  え……違う! 僕が慌てて……    リュウを見ると僕に何も言わなくていいと首を横に振った。  どうして……それにあんな酷いこと言ったのに……  そのままリュウは病院に行き、会うことはなかった。リュウは、その時の怪我で片目の視力を失ったと聞かされたのはずっと後になってからだった。

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