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第5話
放送で呼び出してもクラスを見に行ってもリュウはいなかった。
くっそ! 何処にいるんだ凶暴カエル!
リュウを探して中庭を歩いていた。色んな品種の薔薇と花壇にはフリージアが咲いていた。
リュウと初めて会った時も薔薇とフリージアが咲いていた……
この中庭は俺のも嫌いな場所でもある。フリージアと薔薇の甘い香りに眉を顰めた。この甘い匂いはあの出来事を思い出す……そこに微かに違う匂いが混ざる。
これは……
心臓がドクンと脈打った。前にも嗅いだことがある。その匂いを追って中庭のよく手入れがされた芝生に足を踏み入れた。そこに大きい身体を横にして気持ちよさそうに眠っていた。
「リュウ……」
心臓がまたドクンと脈打つ。なんなんだこの匂いこいつからしてるのか?
「クロエ・エド・リュウ! 起きろ!」
声を掛けても起きる気配がない。俺は仕方なしにやつの身体を揺すった。
「おい! リュウ!」
いきなり腕を捕まれ大きな胸に倒れ込んだ。俺は驚いてその腕を避けることが出来なかった。
「なにす…る!」
「へぇ……おまえ許嫁の顔も忘れたのか?」
凶悪さの増した醜い顔の大きな口を歪ませた。リュウから離れたいのに身体が震えていうこと利かない。
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