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第6話
こんな事今まで無かったのに……怖い……
「離せ! くそ!」
「つれないな……クク、そっかおまえは俺を嫌いだったな。俺だけじゃない獣人が嫌いだろおまえ……心で俺らをバカにして嘲笑ってるだろ。セリアンスロゥプフォビアくせに」
「なっ! 離せ!!」
リュウは離すどころか俺の掴んだ腕の力を強めた。澄んでいた瞳は冷酷に淀み俺を睨みつけていた。
「おまえら人類は自分の都合で俺らを造り、純血人類…特にアルファ族は俺らを嫌ってるくせに、おまえらはオメガを獣人達にあてがう。純血人類のオメガじゃないと獣人達は子孫が残せないとはな……ククっ滑稽だ」
やめろ!
「おまえもな勘違いしてるようだが、純血人類アルファ族に生まれるオメガは崇められてると思ってるみたいだが、ある時期が来れば獣人達に許嫁として差し出される。オメガは純血人類と獣人の商売道具に過ぎない!」
やめてくれ!!
「はっ離せ!」
「ククっじゃ俺の顔にキス……しろよ。したら離してやる」
淀んだ瞳が鋭く光り俺にキスをせがんだ。俺は仕方なしに恐る恐るリュウの凶悪で醜い顔に顔を近付けた。唇が触れる手前でリュウが俺を押し退け、その勢いで俺は芝生に倒れた。
「俺はなトウヤ…純血人類に媚びを売る獣人やバカにしてる純血人類が大嫌いなんだ! おまえのような猫被りなオメガもな! 嗚呼、オメガ臭い! 二度と俺に近付くな!」
リュウは俺を見ないまま立ち去って行く。俺は何も言い返せなかった。
今まで嫌われるいや、こんなに憎んでいる……敵意を剥き出しにされたのは始めてだった。本人が嫌っているんだ断る好都合じゃないか。
なのにこんなにショックなのは何故なんだ……
俺はいつまでも震える手を強く握り締めていた。
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