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第7話
ああ、知っていたさ……俺があの家で厄介者だって事ぐらい。
父も母も兄達もフロエ・クフォード家にいる執事達もとても優しかった。
父と兄達の会話を聞くまでは……最初はショックだった。この家にいる人、全てが信じられなくて俺は何週間も部屋から出なかった。世話係のタクが困り果てていた。父に理由を尋ねられたが頑なに話さなかった。
俺は一人こっそり部屋を抜け出して庭園へ向かっていた。父の部屋を通りがかった時、兄達と父の話し声が聞こえた。
「お父様、なんでトウヤばかり特別なんですか?」
「ロナルド、仕方ないだろトウヤはオメガなんだから。国が援助してくれる。ずっとあんな様子なら病院に入れればいい」
病院……? 俺はどこも悪くないのに……
「オメガがそんなに偉いのですか? 僕達はアルファなのに!」
「ミハエル、そんな事をいうもんじゃない。神のお怒りをかうぞ! あれが発情期さえ迎えたら許嫁の元へ差し出せばいい。それまでの辛抱だ」
「じゃ! 僕、十七番街の竜人がやってるサーカスが見たい! 今、クラスで流行ってる」
「ミハエル! 狡い! 僕はねぇ虹の味がするっていうクレープが食べたいなぁ。新作だって言ってたんだ」
「仕方ないな、それで機嫌直してくれるならいつでも連れて行ってあげるよ。さぁ、おいでロナルド、ミハエル」
父は兄達を宥めるように抱き締めた。俺はあんな風に抱き締められたことなんて一度もなかった。
病気じゃない! 僕も連れてって! いい子にするから! 僕も抱き締めてよ!
「 僕は……っ!」
どうして僕だけオメガなの?
庭園に向かって走った。フリージアと蔓薔薇が咲き甘い香りが漂う。
「フリージアの花言葉……innocence(純潔)、friendship(友情)、trust(信頼)……」
……純潔? 何が友情だ! 信頼なんて知らない! こんなもの!
花壇に咲くフリージアを掴み引きちぎって地面に投げ付けた。嫉みで怒りが抑えられなかった。湧き上がる感情のまま花壇の花を毟っては投げ付けた。
僕は何故オメガなんだ!!
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