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第10話
無視する俺に虎の獣人の生徒がニヤリと笑って執拗に絡んでくる。
「よう! 生徒会長様。今日もお美しいですね! あの転校生はどうですか? さすがの貴方もお手上げですか?」
「……ミッセル、なんの用だ俺は急いでいるんだ」
「おやおや、お疲れのようですね。無敵のオメガ様でも手に負えないとか?」
こいつらはいちいち俺に絡んでくる。俺を気に入らないのは知っていた。俺より下階級で奴らはそれを気にしているようだが、俺はにはどうともいい事だった。
リュウのように敵意を剥き出しにしてくることはない。だが、物言いに現れている。俺は奴らを睨み目を逸らした。
体調が悪いせいで巧くあしらえない。無視しし続けても絡んでくる奴らをもう一度睨んだ。
ああ! 五月蝿い!!
「……うるせぇ」
「はぁ?」
「うるせぇ…って言ってんだろ」
「やっと本性を現したな。トウヤ……」
虎の顔を不適に歪ませた。やつは俺の腕を掴み豹の獣人は俺を殴ろうと拳を振り上げた。突然、俺の身体が大きな腕に引き寄せられた。
「何してんだよ……虎面。これは俺のだ!」
「なっなに! 醜いカエルのくせになんなんだ貴様!」
「おまえも変わらねぇ同族じゃねぇか。くだらねぇなぁ」
リュウの腕の中、微かに彼の匂いがする。ドクンと心臓が脈打ち身体が熱くなる。辺りの空気に緊張が走った。虎の獣人と豹の獣人の生徒はぜいぜいと浅い呼吸をし始めた。
なんだこれ……身体がいうこと利かない!
「この…匂いオメガだ! オメガの匂いだ……」
「っっ! トウヤ…おまえ、もし…かして発情期か」
リュウも苦しそうに浅い呼吸をしている。怖い……
リュウはオメガの匂いを嗅ぎ付けた生徒達から俺を守ろと強く抱き寄せた。リュウは俺を抱え地面を蹴った。高く飛び追ってくる生徒達から逃げる。俺を抱えながら襲ってくる生徒を避けた。不意を突かれ攻撃を避けきれず、地面に倒れる。
俺を庇うリュウの顔が、あの時見た人の顔に見えた。少年から青年になった彼の姿は激しく暴行を受けて顔を歪ませていた。下唇を噛んで耐えている姿はあの時のままだ。
リュウ、どうして……
「もういい…よ……」
この傷… 俺を庇って出来た……
俺はリュウの傷で開かない目にそっとキスをした。そのまま意識が遠くなる____
「トウヤ!!」
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