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第2話
-----気持ち悪い-----
駅に近い歓楽街にある雑居ビルまで歩くが、通りには飲食店、雑貨店、カフェ、カラオケ店などいろいろな店がひしめき合って建っていた。
歩道は清掃されているんだろうか、嫌なニオイが鼻につく。
僕は、別に潔癖症じゃない。それでも、この通りのニオイはひどすぎる。
思わず鼻と口に手をあてると
「どうしたの?気分悪くなった?」
日下部くんが、隣で僕の顔を覗き込んで聞いてくる。
「.......大丈夫。........なんか、すごいトコだね。日下部くんはよく来るの?」
ポケットからハンカチを出しながら聞くと
「ううん、2回目。この間ネットでここの店のレアもの情報が載っててさ、ちょっとほしいのがあって・・・けど、一人じゃ中まで入るのは抵抗あってさ。」
「ふうん」
-1回は、ひとりでここまで来れたって事か・・・
僕なら最初から来れないな。まず、この通りの入口に立ってる〔有楽街〕って書かれた看板にビビる。
「この店なんだ。」
そういうと、ほの暗い店の中に入って行った。
何を取り扱っている店なのか、僕には分からないけれど、日下部くんが機嫌よさそうで僕も嬉しい。気は進まなかったけれど、今の僕には唯一の友人だから。
ここへ来る間に、僕は何人の目に晒されただろう。
僕とすれ違う人は、まず僕の髪の毛を見る。
染めているとしたら、間違いなくヤンキーさんだ。
赤茶色の髪は、大人ならオシャレかもしれないけれど、これで学生服は目立つ。
それから、僕と目があった人は必ずと言っていいほど、じっと見つめてくるんだ。
僕の瞳は、日本人ではあり得ないブルー。
母は、スウェーデン人とのハーフで、瞳の色は薄茶色なのに、僕はおばあちゃんに似てしまったらしい。こればかりは、取り換えようがないので、なるべく人とは目を合わせないように下を向いて歩く。
「ねえ、ひとり?」
ふいに、背後で声が聞こえたので振り返ってしまった。
「あっ、・・・すげっ・・・ガイジン?」
目が合ったので、やはり聞かれるとは思ったが、身長が180cmくらいある、どう見ても人相の良くない二人組に捉まったみたい。僕がすこし横に移動すると、その人達が行く手を塞いでくる。
「あ、の、ボク、日本人です、けど。・・・友達がいるんで・・・」
いろんな物が積み上げられた狭い通路で、逃げ場がなくてドキドキする。
「ボ、ク。・・・だってさ~。って、この制服〔海星〕じゃん。あったまいい~んだ。」
僕のジャケットの襟を指でなぞると、バッジの色を見て
「おっっ、チュウボーかよ。何年?」
「さ、三年・・・」
と、言いかけた時、僕の体が浮いた。
「よし、お兄さんが遊んであげよう。」
そういうと、僕は一人のひとに担がれてしまう。
「・・・・!!!!」声が出ない。
-日下部くん!!たすけて!!
心の中で必死に叫んだけど、僕は非常階段の近くの部屋へ連れ込まれてしまった。
-お母さん、僕、殺される・・・かも・・・
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