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第7話
「どうかした?顔が赤いけど…。」
少しだけ高揚していたのか、僕の顔を見た日下部くんが覗き込んで聞いてきた。
「…いや、どうもしないよ?」
「そう、ならいいんだ。」
日下部くんは、結構僕の事を見ている様で、時々心配をしてくれる。
だからこそ、こうして親しく出来ている。
それに、昨日の事だって、気分が悪くて先に帰ってしまった、ということで納得していて怒ったりはしない。
僕には、他に友人がいない。
つまらないでしょ?と、お母さんに言われても、困る事がないからそれでいいんだ。友達を得るために、自分を偽らないといけないのは嫌だ。
………今だって、時々自分を偽っては疲れてしまう。
午後の勉強は先生が来ないので、僕たちの好きな事が出来た。読書とか、絵を描いてもいいし、この部屋の中にいて出来る事なら、何でもしていいことになっていた…。
僕は一人でも退屈しない読書をする。
特に本が好きなわけではないけど...。
いつものように夕方近くまで過ごし、みんながホームルームをしている間に僕たちは下校する。だから、帰りのバスでも海星の生徒には会わなかった。
家に帰ると、珍しくお母さんが料理を作っていて、いつもは無機質なダイニングテーブルなのに、料理が並ぶと本来の温かさを取り戻していた。
ランチョンマットを敷いたテーブルは、家庭的な食卓の風景で、テレビドラマの一コマの様に僕の心をくすぐる。
「アラ、お帰りなさい。昨日はゴメンネ?!結局、撮影は持ち越しで、来週末にもう一度撮るらしいのよ。そしたら又遅くなるかもしれない。」
「…別にいいよ。僕の事は気にしないで…。」
そういって部屋へ行く。
机の上にカバンを置き、上着をハンガーに掛けると、ベッドにごろんと横になった。
僕を産んだ後、父と別れてずっとモデルの仕事をしているのは、僕の為でもあるのに。
-はぁ。………子供だな、中3にもなって。
すぐ、「別に」とか言ってしまう。
完全に意固地になってるじゃないか…。
今夜のメニューは、僕の好物のクリームシチューに、リンゴとじゃが芋のサラダ。
「たくさん食べてね?」
「…うん。」
僕の食べる姿を嬉しそうに見ているお母さんは、とても幸せそうで....。
もし僕が、家から一歩も出たくないと言ったら…。
学校には行きたくないと言ったら…。
..........お母さんを不幸にしてしまうのかな。
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