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第8話
-8時45分
さっきお母さんに、コンビニへ行ってくると言って家から出てきた僕。
真っ暗で少し寒いけど、僕の心臓は少しだけドキドキしていて、顔だけが熱く感じる。
-9時って言ってたよね、と、もう一度メールの確認をする。
あと15分.......。
マンションの下の植え込みの所に外灯があるから、ここに居れば僕の顔も見える筈。
そう思いながら、バス停から来る道の方に視線を送る。
-あ........
遠くの方から、時々外灯の明かりに映しだされる友田さんの姿が見えた。
昨日はよく見なかったけれど、日本的な顔立ちなのに、足が長くてバランスがいい。
僕も170cm以上は身長が欲しいなと思う。お母さんは、まだこれから伸びるのよ、と言ったけど、運動も何もしていないので、伸びる要素が無いと思って........。
「よっ、ごめんな。待たせた?」
「イ、いえ、大丈夫です。わざわざすみません。」
何に対しての”すみません”なのか....と思ったけど、口から出た。
「えっと、早速・・・コレ」
そう言って自分の携帯を取り出すと、そこに映る画像を見せてくれた。
動画になっていて、まずあのひとたちの顔。
それから携帯を出すところ。アルバムの画面を開くところ。
それから................僕の、写真..............。
「ゴメン、これ見せたら嫌な気分になると思ったんだけど、ちゃんと削除させるとこ見せないと・・・だしな?!ちょっとガマン。」
そういうと、僕の頭をくしゃっ、と撫でる。
-あ・・・
一瞬、僕の心臓がドクンツ、と大きく波打った。
画面の中の僕は、恥ずかしい恰好をさせられていた。
でも、正直そんなものよりも、今の心臓の方がアブナイような気がして.....。
あの人たちの携帯画面から、僕の写真は削除された。
少しだけホッとした僕に
「後は、コレも消しとくから、な?!」
そういって、今見せてくれた動画も削除してくれる。
-あ、消えちゃった......
友田さんの携帯から、僕の写真が消された事が、少し悲しかった。
「コレ、直接見せた方が安心できると思ってさ、ごめんなこんな時間に。」
俯く僕の顔を覗きこむようにして言う。
「いえ、僕の方こそ・・・有難うございました。わざわざ・・・」
なぜか、顔が上げられない。友田さんの顔が見れなかった。恥ずかしい......。
そう思ったら、また僕の瞳から涙の粒が.....
「ぉわっ!!ぇ?.....あ、ご、ごめん。ヤだったよな、あんな写真見せられて....」
慌てる友田さんが、僕の横で飛ぶようにして謝る。何度も頭を下げては、僕の背中をさすったり頭を撫でたり。
「だ、大丈夫・・です。すみません」
僕は瞼を一度こすると、友田さんの手を掴んでいた。
ふいに繋がれた手と手。
ものすごく熱を感じて、すぐには離せなかった。
「あっ、、、」
パツ と離したのは友田さん。
「ご、めん.....え、っと.....なんか、ヤバイな.....。」
頭を掻きながら友田さんが言う。
僕がキョトンとしていると
「俺、ちょっと女の子は苦手でさ、.....もしかしたら男が好きかも.....なんて」
下を向くと、ちょっと悲しそうに言うので、
「僕も、.....女の子は苦手、です。」と言った。
-というか、僕は周りのほとんどの人が苦手です。
「そう、なんだ?・・・じゃ、一緒か!.......」
僕の言葉で安心したのか、明るさを取り戻した友田さんは、笑ってくれた。
その顔を見て、少しだけ僕の口元も緩む。
何年ぶりかで笑ったような気がする。頬の筋肉って動くんだ.........。
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