8 / 128

第8話

 -8時45分  さっきお母さんに、コンビニへ行ってくると言って家から出てきた僕。 真っ暗で少し寒いけど、僕の心臓は少しだけドキドキしていて、顔だけが熱く感じる。 -9時って言ってたよね、と、もう一度メールの確認をする。 あと15分.......。 マンションの下の植え込みの所に外灯があるから、ここに居れば僕の顔も見える筈。 そう思いながら、バス停から来る道の方に視線を送る。 -あ........  遠くの方から、時々外灯の明かりに映しだされる友田さんの姿が見えた。 昨日はよく見なかったけれど、日本的な顔立ちなのに、足が長くてバランスがいい。 僕も170cm以上は身長が欲しいなと思う。お母さんは、まだこれから伸びるのよ、と言ったけど、運動も何もしていないので、伸びる要素が無いと思って........。 「よっ、ごめんな。待たせた?」 「イ、いえ、大丈夫です。わざわざすみません。」 何に対しての”すみません”なのか....と思ったけど、口から出た。 「えっと、早速・・・コレ」 そう言って自分の携帯を取り出すと、そこに映る画像を見せてくれた。 動画になっていて、まずあのひとたちの顔。 それから携帯を出すところ。アルバムの画面を開くところ。 それから................僕の、写真..............。 「ゴメン、これ見せたら嫌な気分になると思ったんだけど、ちゃんと削除させるとこ見せないと・・・だしな?!ちょっとガマン。」 そういうと、僕の頭をくしゃっ、と撫でる。 -あ・・・ 一瞬、僕の心臓がドクンツ、と大きく波打った。 画面の中の僕は、恥ずかしい恰好をさせられていた。 でも、正直そんなものよりも、今の心臓の方がアブナイような気がして.....。 あの人たちの携帯画面から、僕の写真は削除された。 少しだけホッとした僕に 「後は、コレも消しとくから、な?!」 そういって、今見せてくれた動画も削除してくれる。 -あ、消えちゃった...... 友田さんの携帯から、僕の写真が消された事が、少し悲しかった。 「コレ、直接見せた方が安心できると思ってさ、ごめんなこんな時間に。」 俯く僕の顔を覗きこむようにして言う。 「いえ、僕の方こそ・・・有難うございました。わざわざ・・・」 なぜか、顔が上げられない。友田さんの顔が見れなかった。恥ずかしい......。 そう思ったら、また僕の瞳から涙の粒が..... 「ぉわっ!!ぇ?.....あ、ご、ごめん。ヤだったよな、あんな写真見せられて....」 慌てる友田さんが、僕の横で飛ぶようにして謝る。何度も頭を下げては、僕の背中をさすったり頭を撫でたり。 「だ、大丈夫・・です。すみません」 僕は瞼を一度こすると、友田さんの手を掴んでいた。 ふいに繋がれた手と手。 ものすごく熱を感じて、すぐには離せなかった。 「あっ、、、」 パツ と離したのは友田さん。 「ご、めん.....え、っと.....なんか、ヤバイな.....。」 頭を掻きながら友田さんが言う。 僕がキョトンとしていると 「俺、ちょっと女の子は苦手でさ、.....もしかしたら男が好きかも.....なんて」 下を向くと、ちょっと悲しそうに言うので、 「僕も、.....女の子は苦手、です。」と言った。 -というか、僕は周りのほとんどの人が苦手です。 「そう、なんだ?・・・じゃ、一緒か!.......」 僕の言葉で安心したのか、明るさを取り戻した友田さんは、笑ってくれた。 その顔を見て、少しだけ僕の口元も緩む。 何年ぶりかで笑ったような気がする。頬の筋肉って動くんだ.........。

ともだちにシェアしよう!