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第9話
「それじゃ、俺は帰るな?!…」
「…はい、…。」
少しだけ、二人の会話にタイムラグが…。
何を話す訳でもないんだけど、離れがたくて、足が動かなかった。
これで、僕と友田さんの繋がりはなくなる。昨日、出会ったのが稀な事で、本来僕と友田さんは住んでる世界が違うんだ。
友田さんは、太陽に顔を向けるヒマワリ。
僕は……湿地帯に生えるシダ。
決して同じ場所には咲かない。
「…くん?...佐々木くん、どうした?」
ア……、なんか、変。
「すみません。…それじゃあ、おやすみなさい。」
「うん。おやすみ!」
僕たちはそういって離れたけれど、僕は、来た道を戻って行く友田さんの後ろ姿を見ていた。外灯に照らされて、現れては消えるその姿をもう見られないのだと思ったら、初めて哀愁という言葉がわかる気がして.....。
次の日、朝早くに出かけてしまったお母さん。僕は目覚ましをかけ忘れ、目が覚めたらもう10時になっていた。
-めんどくさいな.....
いつもはちゃんと起きられるのに、寝る前に友田さんの顔を思い出したら目が冴えた。
昨日からホントに変な僕。
日下部くん以外の同年代と、話が出来た事が嬉しいのかな?自分でもよく分からないけど、はじめてのワクワクと哀愁が同時にやってきて、頭の中が混乱する。
ダイニングテーブルの上には、ハムとチーズを挟んだクロワッサンが用意されていた。
僕はラップを剥すと、それを口に入れて窓の外を眺めた。
日差しが柔らかい。窓辺のグリーンの鉢が嬉しそうに揺らいでいた。
また、いつもの一日が始まる...............。
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