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第15話
僕の携帯の待ち受け画面では、”風見鶏”が風に向かって凛としていた。
何度もそれを目にしては、結局メールの返信もしないまま。
……というより、出来なかった。
僕にとっての友田さんは、眩しい存在で......。
会いたいと思うのに、怖くて会いたくないとも思ってしまう。
僕が手を伸ばして触れたらいけないような気がして.....。
知り合って仲良くなって、友達と呼べる存在になって、その先は...?
どうすればいいのか分からなくて......。
他人との関り方が分からない僕は、このままフェイドアウトしたいと思ってしまうんだ。
遠くで暖かい光をそっと見ていたいけど、傍に寄ったら焦げてしまいそうで.......。
どうしてこんな僕を気にかけてくれるの?
瞳の色がブルースターの花の色だから?
........僕が裸にされて可哀そうだったから..........?
会いたいのに、会いたくない................。
* *
........コンコンツ。
「アユ、具合はどう?・・・食事はできるかしら・・・?」
部屋のドアの扉を隔てて、お母さんが僕に話しかける。
.........僕は、部屋に鍵をかけた。
お母さんからもフェイドアウトしようとしている.......。
誰も僕を見ないで。
人に見られるのは嫌なんだ。
水や空気のように無色透明になりたいと思った......。
「・・・アユ?」
お母さんの声が悲しそう。
返事をしなくなってもう一週間。
お母さんが仕事に出かけると、僕は部屋から出てお風呂に入った。
それからテーブルに置かれた料理を食べる。
ずっと学校には通っていたのに、こんなに長く休むのは初めてだ。
試験も受けずに、担任からの電話も出ずに、すべてをやり過ごす。
家に引きこもるなんて出来なかった僕だったのに、案外きっかけさえあれば出来てしまうものだった。すべてを放棄してしまえばいいんだ。
ここに居れば誰にも見られない。何も言われない。僕が僕でいられる場所。
.....携帯の受信メールがたくさん届いた。
あの後、3日ぐらい続けて友田さんがメールをくれたけど、もちろん返信はできないまま。
今はもう携帯の充電もしていない。ただのモノになってしまった。
パソコンもただのモノだ。線が無ければ、なにとも繋がらない。
待ち受け画面の”風見鶏”も、消えてしまった。
ここに居れば強い風も吹かないんだ。
それに、風に背を向ける僕は、カザミドリにはなれないんだから.........。
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