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第17話
自分の耳が変になったのかと思ったけれど、僕を気づかう話し方は、紛れもなく友田さんで…。
心臓が跳ねて、口から出てしまうかと思った。
それでも言葉を出せずにいると、
「俺、謝りたくて………。」
と言われて、益々頭が白くなる。
一体何の話をしているんだろう。
悪いのは僕の方で、僕が謝るべきなのに。
「ちゃんと顔見て謝りたい。……少しだけ開けて?!」
僕は戸惑いながらも、一ヵ月ぶりに友田さんの顔を見たいとも思った。ほんの僅か、5センチ程度の隙間を開けると、足元からゆっくり視線をあげる。
そこに見えたのは、頬が硬直して口元が真一文字に結ばれた友田さんの顔。
僕は、友田さんが何を言いたいのか分からなかったけれど、お母さんに聞かれてはいけない様な気がした。
「お母さん、少しだけ二人で話したい。」
そういって、友田さんだけに部屋へ入ってもらう事にする。
僕が、心配そうなお母さんをたしなめるようにドアを閉めると、床に膝をつき友田さんが頭を下げた。
「ごめん!」
「ぇ?…友田さん?」
びっくりした僕も、隣で同じようにしゃがみこむ。
全く訳がわからない。
「俺のこと、気持ち悪いと思ったよな?…」
突然の質問に、意識がついていけない。
「…何の事を言ってるの………?」
友田さんの顔を覗く様に言うと、床についた手をはがそうと握りしめた。
「ダメッ!!」
僕の手を払いのける様にして後ろに飛びのくと、何故か友田さんの顔は赤くなっていて…。
自分の手を握りしめながら、赤い顔のまま僕に向かうと
「俺、最初に言ったよね?男が好きかも、って………」
確かに、女の子は苦手で男が、…って言ってた。
「…はい。」
思い出して頷くと
「俺、佐々木くんの裸に…興奮したんだ。触ってみたいと思った。だから無意識にだけど、いろいろ手が出てたと思う。」
-確かに、僕の頭をクシャツと撫でたり、背中をさすってくれたりはしたけど………。
「あと、しつこく誘ったりして……。絶対気持ち悪かったと思う。自分でも、バカな事をしたって反省してるんだ。」
「…あ、の……」
僕が周りのすべてを放棄して、一人の世界に籠っていた頃、友田さんは全く違う事で心を痛めていたんだ。
しかも、僕自信は気付きもしなかったのに…。こんな事ってあるんだ?
「友田さん、…僕の方こそごめんなさい。」
壁にくっつく様にしている友田さんの手を取ると、それを胸に当てて肩を抱きよせた。
ア,……
軽く息が漏れるけど、友田さんはじっとしていてくれた。
「僕は、……ずっと前からクラスや人に馴染めなくて、…だから、友田さんが謝るような事は何もないんです。いけないのは、僕なんです。」
身体をぎゅッとしたまま話すと、不思議と言葉が出てきて、恥ずかしくはなかった。
友田さんの心臓も僕と同じようにドクドクと鳴り響いていて、ここで僕たちは生きているんだと思ったら、自然と涙が出てくる。
........会いに来てくれてありがとう
ひまわりの様な温もりをくれて、ありがとう.........。
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