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第19話
足元から吹き上げる木枯しに、よろけそうになるのは、このひと月をずっと家の中で過ごしていたから。
久し振りの革靴も、なんだかキツイ。
今日僕は、40日振りに学校へ行こうとしている。
僕の隣にはお母さんがいて、二人並んで登校するのは4度目。
はじめては入学式、2度目は1年生の終わり頃、僕がクラスから遠ざかった頃で、3度目は今年の初めに学年主任から呼ばれた。
今回も、やっぱり学年主任に呼び出されて、重い足取りで歩いている。
お母さんが、担任と電話で話していたときに聞き返した言葉。
「不登校児童…ですか?」
僕は、自分の事を言われているんだと認識した。今までは、”クラスに行けない生徒”だった。でも、学校を長く休んだから、今度は"不登校児童"というタグ付けをされたんだ。
30日以上登校出来ないと、そう呼ばれるらしい。……本当かどうかわからないんだけど、僕は不安になった。
日下部くんたちと離されてしまうんだろうか………。
学校に着いて職員室の前に来た時、有沢先生が丁度中から出てきたところで、僕の姿を見るなり「よぉ、」と頭に軽く手を乗せて言ってくれた。
僕は少し恥ずかしくて、ペコリと首だけ下げたけど、先生はニコツとしただけ。
「…こんにちは。」
「こんにちは、お世話になります。」
お母さんと先生は、互いに挨拶を交わすとお辞儀をして、その後僕らは職員室へと入って行った。
先生に案内されて、僕とお母さんが別室に行くと、今年の初めにも来た相談室は、相変わらずガランとしていて冷たい感じがした。
今日は"不登校児童"のタグ付けをされ、なにか特別な話があるのかもしれない。
緊張している僕の方を見ると、
「歩くんが、今日来てくれたので安心しました。……このままこちらの部屋とか、カウンセリングルームで過ごしていけるといいですね。」
学年主任は、何故か申し訳なさそうな笑顔を向けて話す。
…僕に気を使っているみたい。
それとも、お母さんに対してかな…?
結局、僕が不安になるような話はなくて、前の通り日下部くんたちと同じ部屋で過ごせそうだ…。
少しだけホッとした。でも、何も変わらない………。
僕は、このままこうやって、また三年間を過ごしていくんだろうか?
「あの、..........進級の事は?」
お母さんが心配になって先生に聞いた。
「.....ああ、特には問題ありませんが、.....ただ、授業を受けられないと単位が取れないものもあるので、その辺は相談しながら担任とも.....」
「それなら、その先はどうなりますか?大学進学とか.......勉強はどうしたら.....。」
お母さんの言葉は、空気を重くした。本人はそんなつもりが無いのに、先生はありありと険しい顔つきになる。痛いところを突かれたのだろうか.......。
最終的に単位不足で留年とか・・・有り得る話だ。
そもそも、お母さんは僕のそんな先の事を心配していたの・・・・?
僕は、目の前の事でいっぱいなのに、それを超えた三年先を想像しなければいけない。
.............でも、正直そんなの無理。
とても想像できない。また不安に押しつぶされそうになる。
----もう少しゆっくりじゃダメなの?----
今からもう、僕の人生を読まなきゃいけないの?
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