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第23話
友田さんがバイトをする店は、そんなに広くはないんだけど、明るい木のインテリアが窮屈さを感じさせず、開放感がある。
夜になると、カフェの中にはカップルの客が多くなり、中学生の僕や日下部くんにとっては、照れるようないたたまれない様な気がしてくる場所となった。
「ねえ、海星学院って男子校だし、高校3年生とかおっちゃんみたいな奴いるよね?二人とも食われちゃいそう~~ッ。」
満面の笑みと言うのか、浩二さんが頬を上気させながら僕に話すけど、”食われる”の意味が分からない。
殴られそう、とかの意味だろうか?
僕も日下部くんも話について行けず、ただ首を傾げているしかなくて.........。
「ジュース飲んだら早く帰った方がいいよ?!」
隣の空いたテーブルをフキンで拭きながらも、こちらを覗いて友田さんが言ってくれた。
内心僕はホッとする。一体いつになったら帰らせてもらえるんだろうかと、気になってきたところ。
「はい、そうします。.....ご馳走様でした。」
「ごちそうさま。」
僕らは浩二さんにお礼を言うと、立ち上がった。
そそくさとカバンやコートを手にして歩きだす。
「あ~~ツ、つまんないな~・・・また遊ぼうね。アユムくんたち。」
浩二さんは、椅子の背もたれに大きく体重をかけると、頭の後ろで手を組んで言った。
そのとき、
「おい、アユムくん、って・・・慣れなれしいなぁ・・・。」
友田さんが浩二さんの頭を押すみたいにして言うので、ガタンツと椅子が動いた。
「お、ッ・・・なに?ダメ?アユムくんって言い方可愛くね?」
浩二さんが、友田さんの顔を下から覗き込んでいうが、あまりいい顔をしていない友田さんの口元は少し尖っていた。
僕は、本当はもう少しここに居たい気もするんだ。だって、友田さんの働く姿が見られるなんて......でも、浩二さんの話すことが分からないし、日下部くんにも疲労の色が見える。やっぱり帰らないと.....。
今日は、久々の登校で疲れたけど、ここに来られた事は嬉しいと思った。
そこだけ、浩二さんには感謝して、僕らは店を出た。
「はあ~~~、緊張したー。アユムくんがあのひとたちと知り合いなんて、ビックリ。」
「.......うん。でも、そんなに知ってはいないんだけどね。」
「へぇ、そうか・・・」
「うん。」
この会話だけを交わして、僕らは駅で別れる。
やっぱり、僕と日下部くんの間には、暗黙のルールがあるんだ。
互いの事は、深く詮索しないっていう・・・ね。
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