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第27話

 * *   どこをどう歩いて来たのか、目の前に木枠のドアが見えると、僕は転がるように中へと入った。 僕の目は、すぐに友田さんを見つける。 顔が引きつっているのか、うまく笑えなくて.....。 でも、僕を見た友田さんの顔も引きつっていた。 店の人に「すいません」と言うと、僕の所へ駆け寄り腕を掴んで、カウンターの奥へと連れて行く。 「あ、の・・・」 「いいから、何も言うな・・・」 そういうと、誰もいない更衣室らしき部屋に入れられる。 ドアに鍵をかけると、向き直って床に膝を着き僕の腰に手をかけた。 「ちょっと、・・・ズボン脱げる?」 「え?」 僕は焦る。なんでそんな事・・・・ そう思って下を向き、躰を捻って自分のズボンを確認すると、あちこちに血らしき痕が.....。 「ひどいな・・・よくここまで歩いてこれたね?痛いだろ?」 僕のズボンを膝まで降ろし、下着の上から腰の辺りを見た友田さんは唇を噛みしめていう。 自分ではどうなっているのか分からないけど、痛みよりも、僕はここへ来たかったんだ。 友田さんが『おいで。』って言ってくれたから......。 ここで僕を待っていてくれるから・・・ 「ちょっと待ってて、帰らせてもらうから。コレ、腰に巻いといて。」 そういうと、自分のロッカーにあったセーターを腰に巻いてくれて、汚れを上から隠すようにしてくれた。 - どうなってるんだろう・・・怖い・・・ お店の人に心配そうな目で見られながら、僕は友田さんと店を出た。 有楽街を抜けて、タクシーを止めると、二人乗り込んで行き先を告げる。 僕の座席に自分のコートを広げ、その上に僕を座らせると、ギュっと手を握ってくる。 その友田さんの手は、物凄く熱くて痛かった。何かに怒っているようで、僕の手がしびれて感覚がなくなりそうだった。 「と、もだ、さん?」 話しかけるけど、僕の顔は見ない。ただ、頷いて手を握りしめるだけ。 家に着いた僕は、すぐに風呂場へ連れていかれ、服を全部脱がされてシャワーでからだを洗われた。 痛かったけど、僕は我慢する。友田さんが湯気で曇った浴室の中で泣いていたから。 きっと、僕の代わりに泣いてくれているんだ.......。

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