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第29話
.......自分でも変だと思うけど、Tシャツ一枚で尻を出し、ベッドにうつ伏せの僕は、今人に見せられない所を友田さんに晒し、痛いのにムズムズするような衝動を必死で我慢している。早く塗り終わらないかなと思いながらも、触れられた手の体温が心地良くて、説明できない気持ちになる。
「・・・はい、これでいいと思う。」
友田さんが、ティッシュで指を拭いながら言うと、置かれていた下着とジャージを手渡してくれた。
「あ、りがとう、ございます。」
そう口にするのがやっとの僕に、
「・・・それ、どこで?」
静かな口調で聞かれて、自分に起こった事をもう一度思い浮かべる。
「が、っ校で........ 空いてる教室に一人でいたから....... 」
さっきのムズムズは、この言葉で消えた。
友田さんは、僕の身に何が起こったのか分かっているようだった。
何をされたのかは聞いてこないけど、すぐに僕の後ろの傷を確かめたし、処置の仕方も知っている。
それに比べ、僕は意識を飛ばして自分に起きた事さえ把握できないでいた。
こんな弱虫の僕を、友田さんはなんて思うだろうか.....。
「中学生?.....イヤ、高校生か.......。どうする?先生とかに言っておく方が、」
「イヤです。言わないで!......お母さんに知られたくない。」
友田さんの言葉を遮るように、僕が強く言ったからびっくりして
「佐々木く......ん......いいの? そいつを野放しにしていて.......。」
「.....野放しは.......よくないけど、....他の人が同じ目にあうのは.....ダメだけど...」
「よし、.....じゃあ、そいつの顔とか特徴覚えてたら教えて。」
「え?」
「思い出したくないだろうけど、ここは俺を信じて教えてくれる?」
優しい笑顔で言われて、僕はあの二人の特徴とか目についた事を話した。
しばらくして乾燥機の終了の音が鳴ると、洗面所へ乾かした衣類を取りに行く。
衣類を紙袋に入れると、それを床に置き僕の方を見た友田さんが
「なんか、腹減ったな?」
いつもの顔で言うから、僕もうん、と頷く。
今日は、カフェで夕食を済ませる予定だったから....。
「何か食材とかあったら、俺が作るんだけど・・・」
その言葉で、僕は冷蔵庫に何かないかと開けてみた。
「シチュー用の材料が・・・」
僕が見せると、ニッコリ微笑んだ友田さんが服の袖を捲った。
「よし、じゃあ謙ちゃんのシチューを食べさせてやろうかな?!」
そう言って、僕の頭に手を乗せ自慢げな顔で覗く。
「うん。」
僕は、弾けた声で言うと、すぐに材料を取り出した。
二人で並んでジャガイモの皮を剥く。
友田さんは手つきが良くて、すごい速さで玉ねぎを切っていく。
指を切るんじゃないかと心配するけど、邪魔にならない様に隣で見ている事にした。
ちょっとだけ玉ねぎが目にしみて、二人で鼻をすするけど、友田さんが目を擦ったのは見ないふりをした。
だって、切なそうに笑いながら涙をこぼしていたから............。
........ありがとう、友田さん。
僕は心の中だけで、もう一度お礼を言った。
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