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第31話
新しい歯ブラシをさがして、タオルと一緒に部屋に持っていく。
友田さんが、乾燥した服をアイロンがけしていたので渡すと、それをそのまま受け取りベッドの上に置いた。
「僕がかけておくから、先に歯磨きしてきてください。」
もう一度、タオルと歯ブラシを手渡すと、アイロンを取り上げて促す。
「う、ん・・ありがと。」
首をすくめながら部屋を出る姿に、ちょっとカワイイ、と思ってしまった僕。
お世話されてばかりじゃ悪いし、僕にだって友田さんの役に立てる事を分かってほしい。
夜も更けると、すっかり寝る準備が出来て、二人で布団に潜り込んだ。
「俺、寝相はいい方だから蹴ったりはしないと思うけど・・・」
「僕もすごくいいですよ?あ、・・・でもイビキかくかも。鼻が詰まりやすいから。」
「ははは、そうなの?まあ、俺は叩き起こされないと起きないから・・・気にならないと思うよ。」
「へ、ぇ・・寝起きが悪いんだ?」
「まあな。けど、明日はちゃんと起きるよ。一度家に戻ってから学校に行くし・・・」
「・・・すいません。僕の為に・・・」
「あ、ばか、気にすんなって。俺が泊まりたかったの!! アユムの事ほっとけないんだ。」
「......ア........ユム、って.........?」
「ぇ?・・・ぁああ、ゴメン、つい呼び捨て!」
「ううん、いい、けど........。じゃあ、僕は謙サン・・・とか?」
「クフフツ、なんか渋すぎない?・・・謙ちゃん、でいいよ。みんな呼ぶから。」
「は、い・・・謙、ちゃん・・・・クツ、クツ、ククツ・・・」
「おい、笑うなヨ。・・・ク、ク、クツ・・・」
「「ふ、はははっ、・・・・・・」」
意味はないけど、すごく可笑しくなって、しばらく二人で笑い合った。
そのうち静かになると、僕の方を向いた友田さんが
「今日は泣かなかったな、偉かった。・・でも、無理はすんな、俺の前でなら泣いていいから、さ。」
静かな声で言うから、胸にグッとくる。
我慢をしていたわけじゃなくて、辛さより友田さんといられる方が嬉しくて忘れてしまっていたんだ。それに、何をされたのかはよく覚えていなくて.......。
「はい、今度なにかあったら思い切り泣かせてもらいます。」
僕が友田さんの顔を見ながらいうと、
「今度、なんて絶対させないから!!俺が絶対守るよ。・・・いい?」
「・・・は、い・・・」
その言葉で、僕の涙腺が緩んでしまった。
「あ、ヤベ・・・泣かせてンの俺か・・・?」
友田さんの手が僕の顔をゴシゴシと擦るから、手で止めたけど・・・・
そのまま僕たちは手を繋いでいた。
繋いだ手は、僕の頬の下で二人分の温かさをくれる。気持ちいい。
僕は、知らないうちに深い眠りへと落ちたようで、からだは宙に浮いているようだった。
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