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第32話

 薄暗い部屋の中で、人影が動いているのを感じると、僕のオデコに柔らかい感触が伝わって、ドキリとする。 でも、声はあげずに寝たふりをしたまま…。 すると、静かに部屋のドアが開き、また静かに閉じられた。 僕は目を開けて回りを確認するが、そこに友田さんの姿は無い。 - 帰ったんだ……。 一度、家に戻ってから学校へ行くって言ってたけど、少しだけ寂しくなった。 ひとこと僕に声掛けてくれたらいいのに、と……。 寝たふりなんかしなけりゃ良かったかな? ……でも、……あれは何だったんだろう? 自分のオデコに手を当てて、擦ってみる。 しばらくして、重い身体を起こすと、いつもの様に支度を始めた。 やっぱりお尻が痛い… あんな所をどうやって傷つけられたのか……。 肝心な事は覚えていなくて、僕は情けなくなった。 裸にされたり怪我させられたり……。 ただ、犯された、という思いだけが意識の中にあるんだ。 あの舌の感触が気持ち悪いと思った。 - ヤだな、また思いだしてしまった………。 -- -- -- 外に出ると、冷たい風が容赦なく僕を叩くけど、昨夜の友田さんと過ごした時間は、僕の宝物になった。 お母さんは結局泊まりになったらしくて、メールを確認したら”ゴメン”と一言だけで。 まあ、お母さんも楽しんでくれてたらそれでいいと思う。 僕一人に手を焼かせてしまうのは、心苦しいから.....。 バスに揺られて学校の前に着くと、校門のところにいる人影に驚く。 そこにいたのは、あの浩二さんだった。 「アユムく~ん。おはーっ!・・・って、遅いんだけどぉ。」 「え?・・・どうしたんですか?あ、おはようございます。」 「謙ちゃんからの指令で、偵察~ぅ。」 「テイサツ?」 なんの事だか分からない僕は、浩二さんに肩を組まれていたけど、特に怖さも感じなくて、慣れたんだろうと思った。 「まあ、大体目星はついたし、俺は帰るね!勉強に励めよ・少年!」 それだけを言い残し、だるそうに伸びをしながら歩いて行く。 その後ろ姿を眺めていたけど、やっぱり”変な人”だと思った。 180センチの身体にオカマ言葉の様な、なんか力が抜けるような話し方で.......。 でも、あんな感じだけど、優しいのかもしれない。 ちゃんと写真を削除してくれたし、お詫びにジュースもおごってくれた。 - それにしても、何を偵察に来たんだろう・・・-

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