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第34話

 今日はカウンセリングルームが開放されている日で、他の生徒たちも遊びに来たりしていたから、僕らは別の部屋で昼食をとる事にした。 毎週決まった日にスクールカウンセラーがやってきて、生徒や保護者との面談をするんだけど、僕のお母さんは来た事がない。 僕に関心が無いわけではなく、多分僕の思うようにしていいという事なんだろう。 お母さんも、若くに両親と離れ僕を産んで、今まで自分の思うように生きてきた人。 僕が勉強を辞めたい訳ではなく、単にクラスメイトと距離を置きたくて、今のかたちになっていると思ってる。だから、先生と何を話しても無駄だという。 この間、先の心配をしていることが分かって、僕なりに戸惑いはあったけど、昨夜は帰ってこないし、いつも通りのお母さんで安心した。  職員室からは遠く離れた教室で、僕と日下部くんがお昼を食べていると、北村くんがやって来る。 入口の所で誰かと話しているのか、顔だけ横に向けるが、僕たちからはドアが邪魔して相手の顔は見えなかった。ちょっとだけ北村くんの顔が強張っているんだけど.....。 「あの、佐々木くん..........、先輩が呼んでるんだけど........。」 僕の方に視線を向けると、北村くんが言った。 「・・え?」 そう言われたのは初めてだった。先輩に知り合いはいないし、呼び出されることもなかったから。 「アユムくん?・・・」 日下部くんが怪訝な表情で僕を見る。それから北村くんにも視線を移すと、 「行かない方がいいよ。」 と、小さな声で言った。 「う、ん。・・・」 僕が黙ったままなので、北村くんはこちらに近づいて来る。 「あのさ、廊下で高校生の人が待ってるんだ。・・・呼んで来いって言われて・・・」 北村くんも困っている顔だった。僕が行かないと北村くんに迷惑が掛かるんだろうか...。 少し心配になるけど、僕は廊下へ出ることにする。 ゆっくりとドアに近づくと、前かがみになって顔だけ廊下に出してみた。 そこにいたのは・・・・昨日の二人。 僕の心臓はバクバク鳴り出した。 なんかひどい事をされたのは分かっているけど、誰にも言えない。どうしよう・・・。 僕の首の匂いを嗅いでいた人が 「昨日、ちゃんと歩いて帰れた?・・・大丈夫だったの?」 まるで、自分がしたことを詫びる気が無いのか、薄笑いを浮かべながら聞いてくる。 僕は、早鐘のように打つ鼓動をなんとか鎮めようと、胸に手をやるが震えてしまう。 「あら~かわいそぅ、震えてんじゃん・・・」 もう一人が近づいてきて言うと、二人して面白そうに笑った。 「ねえ、どうなってるか見せてみてよ。・・こっちおいで。」 そういうと、僕の腕を掴んで引っ張っていこうとする。 僕は怯んでしまい、足がすくんで動かない。また、昨日のような目にあうのは嫌だ。 心の中でだけ叫んでいたが、目の前の二人には言えなかった。 ---- どうしよう ......... 友田さん .......

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