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第39話
「ふぅ~っ」
大きなため息をひとつ落とし、海星学院行きのバスに乗り込もうとしたとき
「アユムく~~ん!!」
後ろの方から、僕を呼ぶ大きな声が聞こえて振り返った。
一瞬たじろいでしまう。
そこには、関わってはいけない人たちの顔が・・・・・
「な~に?!今からガッコ行くのぉ~?」
「・・・・・う、ん。」
大きな身体にオカマの様な話し方。一度会ったら絶対忘れられない風貌だ。
学生服は来ているけれど、高校生にない威圧感を醸し出している。
しかも、今日は二人一緒だった。まさか、連れ去られたりはしないと思うけど、僕は身構える。
「やだな~、キンチョーしてんのぉ?!食べやしないしイ~」
「やっぱりカワイイな。この前の写真消して損したア」
「あ、の・・・僕、急ぐんで。」
そう言ってバスのステップに足をかけたけど、グイッと抱き上げられてしまう。
「あっツ!!」
僕の脇を抱えたまま、二人はバスから離れていく。
「ちょっ、、、とオ、、何するんですか?」
本気で焦った。またどこかへ連れ込まれたら、僕は生きて帰れないような気がして。
二人が、鼻歌交じりに僕の腕を自分の肩に乗せると、完全に僕の足は地面から浮いてしまった。
ジタバタするっていうのは、こういう事を言うんだ。僕の足は空を切っている。
「ダイジョウブ!俺たちは謙ちゃんが怒るような事はしないよ?ちょっとオ、お茶飲んでいこうよ?!」
「えツ・・・ア・・え?」
もう僕の言葉もうまく伝わらないだろうと、半ばあきらめに近い声が口からでるだけで....。
連れてこられたのは、普通の喫茶店。
午前10時。まだモーニングのメニューが並んでいて、二人がそれを注文する。
「アユムくんはオレンジジュースね?」
また、浩二さんが勝手に注文して、僕はじっと座っているだけ。
奥の壁側に僕が座って、通路側に浩二さん。向かいには、怖い茶髪の人。
知らない人の目には、きっと僕が脅されている下級生の図に見えるだろうな。
誰か声をかけてはくれないのかな?
・・・やはり、見て見ぬふりか・・・・
そりゃあ、僕だってきっとそうする。だって、この二人の人相は悪すぎるから。
アア..............今日ほど自分だけの登校時間を後悔したことは無い。
この人たちは、学校へ行かないのか?
「ねぇ、アユムくんさぁ、謙ちゃんとなんかあった?」
浩二さんが隣で僕の顔を覗きこむと、目を輝かせて言うので
「な、んか・・・って?」少し身を引いて僕が聞く。
質問を質問で返した僕に、浩二さんは糸のように細い目を見開き、次第に口元が上って行くとニヤリと笑った。
...........怖い..............。 笑った顔が、怖いよ.................。
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