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第42話
小金井さんと言う人が、しきりに顎ヒゲを摘んでは僕の目を覗きこむから、つい俯いてしまう。俯かないでって、友田さんが言ってくれたのに、やっぱりじっと見られるのは苦手だ。
「ほんと綺麗な瞳だね。その目で見つめられるとちょっとヤバイな。謙じゃなくても、オレでもなびいちゃうよ。・・・おっと、ダメだ、未成年者だったな?」
「・・・・?」
何が言いたいのか分からなくて、僕は目の前のコップについた水滴を見つめていた。
「ま、お前らは互いに同意があれば、好きなようにしたらいいさ。なぁ、浩二?!」
「は、はい・・・え?同意?」
浩二さんが慌てて小金井さんの方に顔を向けるが、小金井さんは立ち上がるとテーブルに置かれた伝票を持ってレジに行ってしまった。
「「ご、ご馳走さまですっ!!」」
二人は立ち上がると、レジに向かった小金井さんにお辞儀をした。
僕は、どうしていいものか分からず、座ったままだったけど頭だけ下げておく。
「ふぅぅぅ~~~~焦ったぁぁ~~~~」
浩二さんたちがしばらくして言うので、僕は二人に疑問をぶつけてみた。
「あの小金井さんは、友田さんとどういう関係ですか?」
僕の質問に答えたのは茶髪の人で
「小金井さんは謙ちゃんの叔父さんなんだ。お母さんの弟。」
「へ、ぇ・・・そういえば少しだけ似てるかな?」
「あのひと高校の時からこの辺を仕切っててさ、あの有楽街にも自分の店とか持ってるんだ。まだ40前だってのに・・・すげぇよ?」
水を飲みほした浩二さんが、こちらに首を傾けて話してくれた。
「そうなんですか・・・すごいですね・・・。叔父さん、なんだ?!」
僕にはよく分からないけど、この辺りでタムロしている連中にとっては、小金井さんに睨まれるのが何より恐ろしいって事なんだ。
「・・・あの、それで・・・友田さんの頼みって?」
僕が昨日盗み見た事は言わずに、二人に聞いてみた。
「ぇ? あぁ、それは、・・・アユムくんが、なんか変な奴らに苛められてるらしいっていうから、近づかないようにしてくれって。そいつらの特徴聞いて、だいたい海星の奴で悪いのなんかすぐ分かるからな?それで、学校まで確認しに行ったんだ。」
「そうですか・・・。」
僕にあのひと達の特長を聞いたのはその為か.......。
「まあ、小金井さんの隠し子にしちゃったのはまずかったけどな?」
「そうですよ、若すぎますから・・・・」
僕が当然のように言うと、二人は目を見合わせて、プツ と噴いて
「違うって、・・・小金井さんはゲイなんだよ。子供がいるわけない。・・・フフツ」
浩二さんがニヤケ乍ら話す。
「............ゲ、イ............?」
それが同性愛の人たちの呼び名だという事は分かっていたが、初めて会ったあの人が、と思うと、僕の心臓が鼓動を速める。友田さんの叔父さんが.............?
「友田さんは知って・・・?」
「もちろん。身近な人はみんな知ってるさ。・・・だから俺たちにも偏見ないんだ。」
- え? 俺たちって・・・・
「あぁ、おれと浩二は付き合ってるから、さ。」
目の前のイカツイ茶髪がニヤケ乍ら言ったので、僕は固まってしまった。
---- どうなってるんだ? --------
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