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第43話

爽やかなBGMに包まれて、僕はこのまま家に帰りたくなった。 「…付き合ってるっていうのは……え、っと………。」 恐々聞いてみたけど、それを聞いてなんになるのか、自分でも分からないけど、気になってしまった。 漠然とだけど、いつかは僕も誰かと結婚するのだろうと思っていた。勿論、相手は女の人。 だから、男が好きなのかも、って言った友田さんの言葉をどこか遠い人の話しの様に聞いていた。それが、昨日みたいに身体が反応して、僕もそうなんだろうかと思った矢先。こんな話を聞くことになるとは……。 「付き合うって……解んない?」 茶髪の人が、不思議そうに僕を見るけど、僕の方が不思議だと感じているんだよね? 「普通にデートして、エッチもしちゃうけど?!」 「ぇ、…ッチって……?」 「あれ.......やっぱりアユムくんはドーテーか?」 目を丸くして茶髪の人が、 「おい、止めろって・・・謙ちゃんに怒られる。アユム・ラブだからさ!」 浩二さんがふざけて言った言葉に、自分でも分かるぐらい顔が真っ赤になった。 「あ・・・・・赤くなってるし・・・・」 二人が面白そうに笑うけど、僕の心臓は口から出そうな程で.....。 - ラブ って・・・なん、で? 僕の耳には「ラブ」って言葉が何度もリピートして、どうしていいか分からなくなった。 「ま、そう言う事で、今日は帰ろっかな?!・・・じゃあ、アユムくんはお勉強頑張って?!」 「ぇ?・・・・」 二人が仲良く店を後にするから、僕はひとりポツンと取り残されて、途方に暮れる。 今から行くと、丁度昼休みの時間で、他の生徒に会うのはちょっと気が引けた。 - 僕も帰ろうかな -  僕が駅の方向へ歩き出したとき、 「あら?佐々木くんだったかしら・・・?!」 声のする方向に視線をむけると、そこにいたのは大きな荷物を抱えた女の人。 ニッコリ微笑む顔を見て、その人が友田さんのお母さんだと気づいた。 きりっとした目つきだけど微笑む顔が優しそうで、そう思うとさっきの小金井さんとも似ていた。やはり姉弟なんだな・・・と思ってじっと見てしまった。 「あ、ごめんなさいね?帰るところだったかしら・・・謙の母ですけど。」 「は、い・・・こんにちは。ぇっと、僕・・・・」 今の状況をどう説明したらいいんだろう。なんだかサボっているみたいで、ちょっと恥ずかしい。僕は言葉が出てこなくて、拳をギュッと握りしめた。 「ちょっと、コレ、うちまで運ぶの手伝ってくれないかしら?」 そういうと、大きな荷物の一袋を僕に持たせて先を歩いて行く。 僕は、あっけにとられたけれど、慌ててお母さんの後をついて行った。 - 今日は沢山の人に会う日だな - - - 

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