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第48話

 ‐ ‐ ‐ カチャ、カチャ ‐ ‐ ‐ カチャ ガラスのティーポットをテーブルに置くと、お湯を注ぎ、開いてくる花びらをしばらくの間眺めていた。お湯の中で広がったローズヒップの薄紅色は、とても綺麗で.......。 ほんのり漂ういい香りが、カレーの匂いを忘れさせてくれた。 「なんか落ち着く.....。」 「うん。そうなんだよ........最初は目で楽しんで、次に鼻から入る香り、最後は舌で味わえるってのが、サイコーの癒しになると思うんだよなぁ。」 友田さんが、目を細めて嬉しそうに話をしてくれる。 「ふふッ・・・友田さんて、お母さんにもそういう話するんですね?」 僕が今日聞いた事を告げると、 「ま~ったく・・・ロクな事言わないからな、あの母親は!話半分で聞いておいてくれよ。男が花を好きでもいいだろ?」 「はい、僕も好きですよ?!今までは母がもらってきた花を生けるだけでしたけど。友田さんのお母さんに頂いた花がすごくいい感じに組み合わされてて・・・僕もそういう風に花をアレンジしてみたいって思いました。」 「・・・・あ、りがとう・・・母親も喜ぶと思う・・・」 照れ笑いしながら綺麗な色のハーブティーをティーカップに注いでくれたので、口を運んで味わうとほんのりきいた酸味が口の中に広がっていく。  食器を洗いながら、またハーブの種類について語りだす友田さん。 僕は、洗ったお皿を隣で拭きながら、友田さんの横顔に相槌をいれて頷いた。 そのうち、話す度に揺れる友田さんの喉仏に、僕の視線が集中する。しっかりした首に表われる男の証の突起が、僕の中の何かを呼び起こして......。 それに、襟足の髪の毛が伸びて、首に触れてくすぐったいのか、時々肩をぐるっと回すと首を傾けるから余計に気になった。 「・・・アユム?」 ふいに僕の名前を呼ばれてハッとする。 「あ・・はい?」 目を大きく開いて答える僕に 「ど、した?・・・」 きっと僕の視線を感じ取って、聞いてきたんだろう。友田さんは濡れた手をタオルで拭くと、僕の頭に手を乗せる。 いつも何気なくしてくるその仕草だったけれど、今日の僕はかなり意識してしまい、ドキドキする胸の鼓動を聞かれないようにするのに必死だった。 そのせいで顔を背けてしまった僕を心配したのか、じっと僕の方を見つめてくる。 手も足も、言葉さえ出てこない状況で、固まってしまった僕。 すると急に、目の前に大きな影が出来て、僕は友田さんの胸の中にすっぽり閉じ込められてしまった。鼻先が友田さんの首に当たると、微かなカレーの匂いに混じってハーブの香りと男のニオイがした。 どうしてだろう、僕たちは二人してそこから動けず、じっとたたずむ事しかできないでいた。

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