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第49話
初めて出会った日、友田さんは浩二さんたちに裸に剥かれ放心状態で涙する僕をギュッと抱きしめてくれた。その胸の温もりは、今とは違う感覚だったと思う。
あの日感じた安心感は今でもあるんだけど、そこに付け足された僕の恋心......。
僕の鼓動と同じように、友田さんの鼓動も大きく波打っている。
僕のふきんを持つ手が友田さんの背中に回った時、友田さんの肩に力が入ったのを感じた。ほんの一瞬、ビクンと上がった肩は、そのまま固定されている。
「と、もだ・・・さん」
僕は消えそうな声で、名前を呼んだ。
「・・・・アユ、ム・・髪の毛、カレー臭い・・・」
「・・・ぇ・・・えっ?」
「ずっと、カレーの鍋を焦げない様にかき回していたんだろ?! 匂いが染み付いたな?」
まるで何事もなかったかの様に、僕の身体を離しながら言ったから、僕はポツンと取り残されたみたいな気持になる。ドキドキして大きく膨らんだ風船が、あっけなくしぼんでしまったみたいで......。
「と、もださんの服だって・・・カレー臭いですよ。」
僕も気を取り直して言い返した。
「あ、ホントだ・・・」
自分で服を摘むと、その匂いを嗅いで笑う。
もう、いつも通りの友田さんに戻っていて、それを良かったと思う自分と、少し寂しいと思う自分がいた。
「アユムの学校って、大学受験のために一年先の勉強をしているらしいね?アユムも?」
それぞれに入浴を済ませ、リビングのテーブルに教科書を広げた友田さんが聞いてくる。
「はい、そうですね。・・僕は、そこまで追いつけているか自信はないんだけど・・・」
教室で授業を受けていない僕は、自分で進めるしかなく、ほとんどが独学。
参考書で解らない所を先生に教えてもらっていて、勉強が追いついているかどうかは、試験の結果でしか分からないので、今まではほとんどの時間を勉強に費やしていた。
「じゃあさ、ひょっとして俺とアユムの学力って一緒、とか?・・あ、多分アユムの方が勉強できそうだな・・・」
頭をクシャクシャしながら言う友田さんの顔が、すごく悔しそうなので笑ってしまう。
「そんな事ないですよ。やっぱり一年の差は大きいから・・・」
と言っておいたけど、もしかしたら時間を持て余して勉強ばかりしていた僕の方が進んでいるのかもと思った。
友田さんと出会う前は、こんな時間を過ごすことが無かったし、日下部くんとも学校で会うだけ。時々買い物に付き合う程度だったから・・・・。
「まぁ、やるしかないな?・・えっと、1時間だけ試験勉強するからさ。」
「はい、僕は自分の部屋にいますから。寝るとき言ってください。」
そう言って、声をかけると、友田さん用の枕を胸にした僕を見て
「今晩、お母さん帰って来ないんだ、よね?」
顔は向けずに聞いてくる。
「はい、静岡ですけど・・・泊まるらしくて。」
「じゃあ、アユムはお母さんのベッドで寝られるな?俺がアユムのベッドで寝るからさ。」
「・・あ、・・はい、そうですね。」
言われて気づいた。僕は、完全に前と同じ様に一緒の布団で寝るつもりだったんだ。
さっき、あんなにドキドキしたのに、同じ布団でくっついて寝ていられる訳がない。
それに、この間みたいに変な気持ちになったら..................。
思い出して赤面した僕は、顔を見られない様に枕で隠して自分の部屋へ行く。
椅子に座って、パソコンに向かった僕は、なんとなくネット検索をかけてみた。
”同性愛”
言葉の響きが艶めかしい。北村くんの見せてくれた画像みたいなものが色々出てくる。
筋肉がついた外国人の裸体はすごく綺麗で、彫刻の様だった。
こういう感じの人たちが、そうなのかは分からないけれど、どちらにしても僕とはかけ離れ過ぎている。僕は筋肉どころか・・・コドモの身体なんだから・・・。
ため息をつきながら画面をスクロールしていくと、指が止まった。
そこには、男性同士のセックスの内容が文章で書かれていて、お尻の穴に性器を入れると記されていた。
身震いがする。この間の事は記憶にはないけど、目を覚まして自分の身体に起こった違和感と、精液の痕。あの傷は....................僕に...............入れた?
- う...................ぅ...............
自分に起こった事実が、今になって分かるなんて・・・
どうやってあんなところを傷付けたのか、分からなかった僕がマヌケなのか・・・?
- - - そうか、友田さんはこの事を分かっていたんだ
- - - だから僕のズボンの血痕を見て、後ろの傷にもすぐ反応した
- - - あの日の涙は、僕が怪我をして可哀そうだと思っただけじゃない
- - - 自分自身、ひどい事をされたのは感じているけれど.....
- - - 僕が感じた〔犯された〕と思ったのは、舌ベロの感触なんかじゃなかった
- - - 僕は..............................汚れてる..............................
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