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第50話
ブルーライトを浴びて、目がチカチカするのにパソコンの画面を一心に見ている僕。
スクロールする指が止まらない。次々に入って来る情報に、頭は錯乱していたようで、僕の後ろに来た友田さんにも気づかなかった。
「アユム、何見てんの?」
・・・その声で我に返った僕は、後ろを振り返った。
「ちょ、っと!!なに見てんだよ?!」
「え?・・・ぁ・・」
画面の中に映し出された裸の男性。下半身は見えてはいないけど、誰が見たって二人は愛し合う恋人同士の様だ。見つめ合う目と目は、互いの想いを伝えあっていて綺麗だと思った。
「・・・・・友田さんは、男の人が好きなんですか?・・・」
僕の唐突な質問で、目を丸くする友田さんだったが、やがて視線は下げられて下を向いてしまう。
自分でも、変な質問をしてしまったと思ったけど、聞いてみたかった。
自分の気持ちに気づいたのに、あの人たちに汚されてしまった僕をどんな風に見てくれるのか..........。
「た、ぶん・・・友達が女の子の話とかしてても、興味持てなくて・・・」
「そうなんだ?!・・・僕も、ですよ。でも、男の人に興味があるのとも違うような。」
「俺は、興味ある・・・よ。」
「こういう筋肉質の男っぽい人に憧れるんですか?」
「・・・・・・・・・・」
返事は返ってこなかった。
僕がいつになく感情的になっていたからか、変な質問されたからか・・・
友田さんは、ゆっくり僕のベッドに腰を掛けると、静かな声で言った。
「俺は、・・・アユムに興味がある、んだ。」
「...................」
今度は僕が黙り込む。
はっきり言葉にして言われると、なんだか恥ずかしくて返答に困ってしまう。
それは、僕が言いたかったのに............。
「友田さん・・・・僕は汚れているんです。」
さっき見た文章の事を話しながら、友田さんの前に立つと、じっと顔を見つめた。
「汚れてなんかいない。あんなの事故にあったようなもんだ。忘れた方がいい。」
友田さんがそっと僕の両手を取ると言ってくれた。
握られた手のひらが暖かくて、僕はその手を自分の頬に引き寄せて当ててみる。
大きな手のひらと、少し骨ばった指が僕の頬を撫でると、僕はゆっくり目を閉じた。
心臓は、自分でも驚くほど早鐘の様に高鳴っていたけれど、今は身をゆだねたいと思った。
ネットのなかのどんな情報より、目の前の友田さんに教えてほしい。
僕に興味があるのなら、友田さんの好きなようにしてほしいとさえ思ってしまう。
目を閉じた僕の顔を少しだけ引き下げると、友田さんの唇がほんの僅か僕の唇に触れた。
でも、僅かに感じたその柔らかい感触は、すぐに途切れる。
「明日、試験だから............。もう寝ようか?・・・アユムもおやすみ。」
ゆっくり目を開けた僕の身体を少し離すと、自分だけ布団に潜り込んでしまった。
「は、い....................。おやすみなさい。」
僕は自分の枕を手にすると、ドアを閉めお母さんの部屋へと向かう。
友田さんは、冷え切った廊下を歩く僕の頬が、涙で濡れていた事を知らない.........。
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