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第54話 *
僕の唇を食む度に、小金井さんの髪が頬に当たるからくすぐったくて、僕は噴き出しそうになるのを堪えていた。身体に走った電流も、少しずつ冷めてきた様で.....。
何故だろう、この行為は自分が望んだ物じゃないからかな?
されるがままの僕を見て、小金井さんがふぅ、っと溜め息をつくと身体を起こす。
「…なんか、やる気が出ないな~~、もう少し興奮するとか無いの?初めてで緊張してるのとも違うし……」
上から見つめる瞳は呆れているようにも思えたが、僕は返事をしなかった。
「自棄になってオレに抱かれてもいいと思っているんだろうけど、オレはそういうのこだわらないからな。イヤだと泣いても自分がヤりたきゃ犯すよ?!」
小金井さんはそういうが、無理やりするとは思えない。僕は本能でそう感じ取っていた。
それでも、大人をからかう様な真似は出来なくて、僕はごめんなさい、と言うと、シャツの襟を直してベッドから起き上がる。
小金井さんは僕の唇を堪能したのか、それ以上はもう触ってこなかった。
中学生の僕では、相手にならないって事なんだろう・・・
タバコに火をつけて咥え乍ら、リビングのソファーにドカッともたれ掛かった小金井さんが、僕に言う。
「アユムは、謙の事が好きなんだな?」
「ぇ・・・・・・?」
一瞬だけ言葉に詰まった。正直に話してもいいのだろうか?
血のつながりのある甥の事を好きだというのは、叔父としてはどういう風に思うもの?
自分がゲイだとは言っても甥の友田さんも同じだと知ったら嫌な気になるんだろうか。
それに、友田さんは自分の事を話していないだろうし............。
「興味があるんです。謙さんは優しくて、いつも僕を助けてくれるから......。」
「興味・・・・ねぇ・・・・」
そう言った後で、小金井さんはタバコの煙を天井に向かってふぅっと吐き出しながら、テーブルの上の携帯を取ってどこかに電話を掛ける。
携帯を掴んだ長い指が、やっぱり友田さんに似ているな、と思って、僕はただぼうっと見ているだけだった。
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