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第56話

 叫び疲れてうな垂れる僕を見て、ガサガサと鳴る紙袋を抱えた小金井さんは、ドアを開けるなり呆気にとられて動けなくなってしまったみたいで....。 僕は大声で叫んで泣きじゃくり、目と鼻の頭を赤く腫らしていた。 「な・・・・なに?・・・ぇ、泣いちゃったの?.......ウソ.........。」 小金井さんが少しずつ僕に近づいて、しゃがみ込んでいる僕の顔を覗きこむ。 「マジかよ..........これじゃあ犯罪だろ?俺そんなにひどい事した?」 テーブルの上に、買ってきたハンバーガーの袋を置くと、冷蔵庫から氷を取り出しビニール袋に入れ乍ら言った。さすがにキッチンはなかったが、飲料用の冷蔵庫は置かれていて、氷も入っていたらしい。ビニールの口を縛るとタオルにくるんで僕の顔に当ててくれる。 はあぁぁ~ 小金井さんのため息は、情けない僕の姿に向けられて、それを痛いほどに感じる僕にさらなる涙を流させた。 自分では感情のコントロールがきかなくて、僕はタオルに顔を埋め嗚咽を漏らしては泣いている。 ガサガサッ・・・ 音のする方に目をやると、小金井さんはハンバーガーを取り出して食べようと口を開けたところだった。僕に付き合ってじっとしていても仕方が無いんだろう。お腹も減るし、僕に構わずいてくれる方が僕も気が楽だ。 「..............ゴメン。ちょっと大人げなかったかも.....。」 しばらくすると、髭についたソースをナプキンで拭いながら、小金井さんは言った。 「.........いえ、僕が悪いんです。......こんな所にのこのこ付いて来て.......。」 瞼に氷を押し付けて言う僕に 「おいおい、こんな所って・・・・・まぁそうだな?!教育上好ましい場所ではないな。」 少しトーンダウンした声が返って来る。 「すみません・・・・」 僕は謝った。自分の非を他人のせいにしたみたいで、この場所を悪い所の様に言ってしまった。 「まあ、とにかく食えよ。腹減ってるだろ?」 「はい、・・・ありがとうございます。」 僕は、タオルを置くと小金井さんのくれたバーガーの包みを手に取った。 時々、鼻をすすりながらハンバーガーに食いつくと、隣で見ている小金井さんがクスツと笑う。きっと呆れているんだろうと思う。目を腫らしながら、それでも空腹には勝てない。 泣き過ぎたのか、空腹感が増していた僕は、ポテトもジュースもすべて平らげて、ソファーにもたれ掛かるといつの間にか眠気に襲われてしまう。 小金井さんの存在を怖がるでもなく、気が遠くなるような感覚に陥った。 - - - - ガチャン- - -  何かが割れるような音で目が覚めた僕は、目を擦って音の出た方向を見る。 ソファーに横たわった僕の目にぼんやり映ったのは、小金井さんに掴みかかる友田さんの姿だった。 - - - え、どうして?

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