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第65話

 バスに揺られて乗り換えの駅に着くと、日下部くんと別れた僕と桃里くんは、同じ電車に乗るために改札口を目指した。 「佐々木先輩と同じ方角って、奇遇ですね? 今度また一瞬に帰ってもいいですか?」 冷たい空気が鼻に当たり、時折ズズッとすすりながら僕に聞いてくる。 「うん、………あ、でも寄り道する事もあるから、その時以外ならね!」 「…ハイ、ありがとうございます。」 なんだか、僕より大きな身体の子に低姿勢になられるって、チョット気持ちよかった。 でも、周りの人からは、僕の方が後輩に見えるんだろうな。 桃里くんと話す時は、かなり見上げないといけなくて、友田さんより背が高いんだと分かると、会いたい気持ちが込み上がってくる。 二人でホームへの階段を降りると、反対側から電車が入ってきたところで、これって友田さんの使う電車だ。と思って見ていた。 なんとなく、前に別れたホームの場所に身体が動いて、僕が歩いて行ったとき、丁度開いたドアから偶然にも友田さんが降りて来た。 「「あ…!」」 お互いに驚いて言葉を出すけど、友田さんはすぐに隣の桃里くんの方を見る。 「アユム、偶然だね?今から帰るとこ?」 「うん、………そう。」 どうしてだろう、なんとなくいつもの声とは違う様な気がした。優しく話しかけてはくれてるけど……。 「友田さんは、これからバイトですか?」 「…ああ、今日は早めに入っているから…」 「……じゃあ、…また。」 「うん、………」 僕たちは、すれ違いながらも互いの顔を見つめたまま別れた。 「知り合いですか?」 隣で桃里くんが尋ねるけど、半分頭がぼぅっとしていた僕は、首だけでうん、と返事をした。 電車が来ると乗り込んだが、僕の頭は冴えない。 中学生の僕は、アルバイトなんて出来ない。だから、冬休み中何をしようかと考えてしまう。 友田さんは、毎日でもバイトしそうだし…。 「…あの、よかったらアドレス交換してもらえませんか?」 え?っと横を見上げれば、携帯電話を手にして桃里くんが微笑んでいた。 「僕と?」 「はい、…冬休みに暇だったら、どこか行きましょうよ。」 屈託のない笑顔を向けられて、僕はつい、「いいよ」と言ってしまった。 毎年、退屈な冬休みを過ごしてきたから、少しだけ変化を求めたのかも……。 立ったまま、足の間にカバンを挟んで携帯電話をいじると、すぐに僕の降りる駅に着き、桃里くんに手をあげてから電車を降りた。 風は冷たいけれど、太陽の陽射しが頬にあたると、ほんのり暖かい気がするのは、僕だけかな?

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